<開港25年 石見空港>2 滑走路 走ってみようよ

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

2000メートルの滑走路を走るマラソン参加者(2017年10月15日)(益田市で)
2000メートルの滑走路を走るマラソン参加者(2017年10月15日)(益田市で)

 ◇ANA提案に市長決断

 「空港の滑走路をコースに入れたマラソン大会を開きましょう」。石見空港開港15周年の前年の2007年6月。ANAグループの若手社員有志のチームが益田市に、そんな提案を投げかけた。

 「できるわけがない」。当時、同市空港対策室長だった高橋和則さん(63)(現・益田市社会福祉協議会美都支所長)は提案を聞いてそう感じた。

 当時の主な任務は空港の利用促進。「空の日」のイベントも担当し、空港内の制限エリアを開放する難しさは承知していた。

 それでも、ANA側の熱意は冷めず、再度提案してきたため、市の幹部会議にかけた。「全国にないイベントで益田をPRできる」「市民が一体となって盛り上がれる」といった前向きな意見と、「時間がない」「予算、担当はどうする」と慎重な意見がぶつかった。

 結論が出ないまま時間は過ぎたが同年11月の会議で、司会を務めていた斎藤ひとみ副市長(当時)が、牛尾郁夫市長(同)に決断を促し、開港15周年記念事業として動き出した。

 ANA側はなぜ、益田市を選んだのか。

 提案は、ANAグループの社員が航空需要の喚起や、地域貢献などを目的に自発的に行う活動の一つ。「むちゃくちゃなことをしようじゃないか」。ANA内で「面白いことを考えろ」と言われたANA関西空港の小島克己さん(50)が考えるうち、ふと浮かんだのが「滑走路を走る」というアイデアだった。

■実現に疑問の声

 天気、地域経済への効果、開催中に緊急着陸される恐れはないか……。様々な条件を調べ上げ、たどり着いたのが石見空港だった。

 当時の石見空港は早朝の羽田便と夕刻の大阪便しかなく、日中滑走路は空いていた。「課題はむしろ、『田舎の町に大きな大会の予算を組む力があるのか』と疑問視するANA内を説き伏せることだった」。提案チームのディレクターとなった小島さんは振り返る。

 小規模だがハーフマラソンなどの大会を開いてきた実績のある市陸上競技協会も加わって、08年10月には、35都府県から約2100人が集まり「萩・石見空港マラソン全国大会」を実現。小島さんは「防犯カメラ、スタッフの配置など安全確保には万全の対策をとってもらったおかげで、9・11(2001年の米同時テロ)の後でも実現することができた」と話す。

 市内のNPOの主催で、12年に始まった益田市の自然を自転車で巡って楽しむ「益田INAKAライド」にも13年からコースに滑走路が組み込まれた。

■便数少なさ逆手に

 ランナーやサイクリストを感激させるのは滑走路を走る特別感だけではない。参加者の多くが大会後のアンケートなどで挙げたのが、「沿道の人たちの声援、もてなし」だ。

 便数の少なさを逆手にとったユニークなイベントが人を呼ぶ。高橋さんは、「大会を通じて、市民が全国から来た人たちをもてなし、益田のことを知ってもらいたいと思うようになったのではないか」と喜ぶ。今後について問うと「飛行機の便数が増えてイベントができないくらい、町が活性化するのが望みです」と答えた。

 ◇大会の経済効果大

 市は「第1回萩・石見空港マラソン全国大会」による経済効果を5000万円とはじき出し、相当な効果があったとしている。

 昨年10月の第10回大会前日(土曜)の到着便、当日(日曜)の出発便計4便の搭乗率は70.5~97.6%で、単純比較はできないものの同月の平均搭乗率より8.8~32.1ポイント高かった。

 第4回からは3000組を超える申し込みが続くが、斎藤・元副市長は「大会が空港の利用促進や地域の活性化に寄与したか、検証する必要がある」と指摘する。

無断転載・複製を禁じます
27709 0 shimaneの今 2018/06/28 05:00:00 2019/01/16 11:39:34 2000メートルある滑走路を走るマラソン参加者(2017年10月15日)(益田市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180627-OYTAI50014-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ