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青い空の下、砂浜にポツンと置かれた白いドア。シュールな光景でありながら、なぜかドアの向こうに別の世界が待っている気がしてくる。そんな不思議なオブジェが、大田市仁摩町馬路の琴ヶ浜にある。
考案したのは、地域おこし協力隊の武部豪さん(62)。県から「浜で何かイベントができないか」と相談され、砂浜に映える白いドアを考えた。
海が穏やかな季節がいいと、馬路地区観光振興協議会が初めて設置したのは昨年の春。鳴り砂で知られる国天然記念物の指定区域外にある浜を選んで置いたところ、SNSなどで人気に。今年も4月から日中に設置している。
晴れた日や夕暮れ時には、親子連れらが記念撮影したり、不思議そうにドアを開けてくぐったり。武部さんは「とにかく楽しんでほしい」とほおを緩める。
この取り組み、実はちょっとした仕掛けがある。約3キロ離れた砂の博物館「仁摩サンドミュージアム」に、「琴ヶ浜への扉」と名付けられた同じドアが展示されているのだ。
こちらは琴ヶ浜の砂を敷き詰めた屋外の展示スペースにある。屋内から鑑賞するため、閉じられたドアを開けることは出来ない。だがその足で琴ヶ浜へ向かう人も多いという。
施設を運営するシルバーランド振興事業団の小川英二事務局長は「面白いアイデア。閉じたままのドアの向こうは、本当に琴ヶ浜とつながっているのではと思えてくるんです」と話す。
武部さんは今後、道の駅「ごいせ仁摩」や三瓶山周辺にも設置し、琴ヶ浜のにぎわいを市内全域に広げたい考えだ。「ちょっとのアイデアで、面白いことが出来ることを感じてほしい」(佐藤祐理)
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