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    競技場整備 J1昇格の壁

    グリスタ屋根、トイレ不足 新施設は県費数百億必要

    ◇自前持たぬ苦悩 

    Jリーグが今季から導入したクラブライセンス制度で、栃木SCは昨秋に審査をパスし、昇格すれば1部リーグに参加できる「J1ライセンス」を獲得した。だが、「文句なし」の取得ではなかった。ホームスタジアムの設備が基準を満たしていないと、改善計画の提出を科せられたのだ。

    • グリスタの屋根は小さい。屋根の下にも吹き込むため、どこに座っても雨ざらしだ(1月25日、県グリーンスタジアムで)=工藤圭太撮影
      グリスタの屋根は小さい。屋根の下にも吹き込むため、どこに座っても雨ざらしだ(1月25日、県グリーンスタジアムで)=工藤圭太撮影

     SCは、自前の競技場を持たず、県が所有する県グリーンスタジアム(グリスタ、収容1万5589人)を借りて本拠地登録している。クラブ幹部たちは改善計画の壁を前に、ため息をついた。「スタジアムの問題はクラブ単体では解決できない。改善しろと言われても……」

     新制度の審査基準は「競技」や「財務」など5分野で、計56項目が設けられた。「施設」は15項目がホームスタジアム、2項目が練習場について規定している。グリスタは、15項目のうち、必須とされる「A」ランクの10項目は満たしている。しかし、改善計画提出などが科せられる「B」ランクの3項目は、「屋根」と「衛生施設(トイレの数)」の2項目で不備が指摘された。

     「屋根」の規定は、観客席の3分の1以上を覆っているのが条件。しかしグリスタが覆うのは「500席ほど」(SC関係者)で全体の約30分の1に過ぎない。トイレの数も遠く及ばない。Jリーグの創設以前に設計されたサッカー・ラグビー専用競技場のため、観客の使いやすさには配慮していない。SCがリーグに提出した改善計画書には、苦心の跡がにじむ。

     「多数の来客が予想される試合では、仮設トイレを設置する」。屋根の改修予定は「ない」とした。

     それでも、リーグが最終的に首を縦に振ったのには、理由がある。県が総合スポーツゾーン構想の中で、陸上競技場の建設を予定しているためだ。完成は早くても2020年頃ながらも、構想通りに進めば新制度の基準がすべて満たされる。収容2万5000人以上と、規模も十分だ。

     ただ、数百億円の県費を投じる大事業。景気や県財政が一変すれば計画中断や白紙撤回もありうる。リーグは、15年度までに計画が進んでいるかを設計書などで示すように求めており、これができないとライセンスの剥奪も想定される。

    既に15億5500万円 こうした事態も想定し、グリスタの改修も進めてほしいというのがSC側の本音だ。だが、SCがJ2昇格を決めた08年以降、県は芝生席だったバックスタンドを全て個別シートにするなどの改修を重ね、3年間で総額15億5500万円をグリスタに注ぎ込んできた。新競技場の計画を進めつつ、またもグリスタ改修となれば、県民の批判を招くのは必至だ。

     さらに、Jリーグが新たな規定として検討している座席の広さが悩ましい。15年にも「1座席45センチ以上」の規定が導入される可能性がある。グリスタには1座席約40センチでカウントされた長椅子席が多いため、座席数でもJ1基準を満たせなくなる。「最悪の場合、15年には施設を理由にJ1参加資格を奪われる可能性もある」。SCの星剛取締役は危機感をあらわにした。

     サポーターはどうみているのか。

     「陸上兼用だと選手との距離が遠くて、豆粒ほどにしか見えない。交通は不便だけど、グリスタの方がいい」。宇都宮市内の男性(35)はこぼした。多くのサッカー好きは、ピッチと観客席の間にトラックがある陸上競技場よりも、それがないグリスタのような専用スタジアムでの観戦を好む。SC側も「専用スタジアムがいいのは我々も同じ気持ち……」と頭を抱える。

     果たして、安定したライセンスの維持は可能なのか。施設整備の厚い壁が立ちはだかる。

     

     ◇グリスタ駅から遠く、マイカーも不便

     グリスタは、宇都宮市清原工業団地にあり、JR宇都宮駅から10・9キロ離れている。電車ではアクセスできず、交通手段はバスか自家用車の二者択一だ。Jクラブの中でも指折りの劣悪な交通環境は、客足が遠のく一因にもなっている。

     ホームスタジアムと最寄り駅の距離をJ2の他クラブと比較すると、同じ北関東のザスパクサツ群馬と水戸ホーリーホックは約5キロでSCの半分。読売新聞の調べでは、昨季と今季の両方をJ2で戦う18クラブの平均距離は4・56キロで、SCより遠いクラブは11・3キロの愛媛FCだけだった。

     SCはJR宇都宮駅から無料のシャトルバスを走らせているが、所要時間は約30分。駐車場は近隣の工場敷地内に2200台分を借りているが、周辺の柳田街道などは県内で最もひどく渋滞する道路で、駅から1時間近くかかる日もある。

     昨年11月の宇都宮市長選では、渋滞緩和などを目的とする次世代型路面電車(LRT)の整備を掲げた佐藤栄一市長が3選した。LRTは市中心部と清原工業団地の間を結ぶ予定で、グリスタへの足も大幅に良くなると期待される。ただし、「5~6年後の完成を目指す」(佐藤市長)という計画で、先は長い。

     一方、2020年頃に県が新設する予定の陸上競技場は、宇都宮競馬場跡が予定地。東武宇都宮線の西川田駅から約700メートル、徒歩約5分で着ける。

     ◇総合スポーツゾーン 

     県が宇都宮市西川田地区に陸上競技場や体育館などを新設し、既存の野球場などと合わせて県内スポーツ施設の一大集積拠点とする構想。13年度中に全体構想を策定し、14年度以降に基本設計、着工と進む。経済状況などを考慮し、サッカー専用ではなく陸上と兼用の競技場となる方針だ。

    2013年02月05日 23時47分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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