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    聖地男体山 圧巻ご来光

    • 雲海から顔を出した太陽が山頂を照らした(1日午前5時5分)
      雲海から顔を出した太陽が山頂を照らした(1日午前5時5分)

     ■頂上に挑む 

     勝道上人は山頂からどんな景色を見たのか――。それを知りたくて、8月1日、初めて男体山を歩いた。

     二社一寺のある日光市山内さんない地区から車で約30分。中禅寺湖のほとりに着く。市街地から離れ、男体山や中禅寺湖、湯元温泉のある一帯は「奥日光」と呼ばれる。

     「仏の道を学び、大きくなったら日光山を開きなさい」。735年に今の真岡市に生まれた勝道上人は7歳の時、夢に現れた神にこう告げられたとされる。そして後に、はるかに見える美しい円すい形の男体山を目指し、今の輪王寺の発祥となるお堂を建てた。ここを拠点に、頂上に挑んだそうだ。

     中禅寺湖のそば、日光二荒山ふたらさん神社中宮祠ちゅうぐうしの敷地内に、朱塗りの登拝門がある。ここが男体山への入り口だ。男体山全体が神社の敷地になっており、頂上に奥宮おくみやがある。そこまでの山道が参道なのだ。

     ■急な山道 

     午前0時に登拝門が開く。暗闇の中、頭に付けたライトが頼りだ。かなりきつい上り道。参道と聞けば、多くの人がまっすぐ敷かれた石畳を思い浮かべるだろう。この急峻きゅうしゅんな山道が参道であることが不思議だ。

     勝道上人はこの道を登ったのだろうか。いや、当時、男体山は未開の山だった。「勝道上人は今の山内地区から女峰山を越え、中禅寺湖と反対側から登ったんですよ」。奥日光小西ホテルの安倍輝行さん(38)の言葉を思い出した。宿泊客に奥日光の自然情報を伝えるため、数え切れないほど男体山に登ってきた人だ。

     勝道上人が山頂に立ったのは、平安遷都の12年前にあたる782年。行く手を雪や霧に阻まれて失敗を繰り返した末の、最初の挑戦から15年後のことだ。

     7合目を過ぎると、一層厳しい岩場になった。手を使わないと登れない。8合目にある滝尾たきのお神社の脇の絶壁には、修験者が用いた鎖が垂れていた。山にこもって修行する修験道の聖地だったと、一人うなずいた。

     岩場をぬけると、さらりとした土に変わった。案内してくれた神社氏子の高田まさるさん(44)によると、男体山の噴火で積もった火山灰だという。高田さんが貸してくれたステッキを使い、少しずつ前に進む。すると、目の前に小さな社殿が見えた。奥宮だ。勝道上人が初登頂した時につくったほこらが起源なのだという。

    • 山頂からの眺め。中禅寺湖と日光連山の大パノラマが広がる(1日午前6時18分)
      山頂からの眺め。中禅寺湖と日光連山の大パノラマが広がる(1日午前6時18分)

     ■眼下の湖 午前4時。空が白み始めた。山頂はご来光を待ちわびる人でいっぱいだ。

     太陽が雲海から顔をのぞかせ始めたのは、5時過ぎ。8月というのに、マフラーをしなければならなかった寒さから一転、暖かい空気に包まれた。ご来光を拝み、「万歳」を繰り返す人たちの顔は柔らかなオレンジ色に照らされていた。

     眼下では、大きな中禅寺湖の水面みなもが銀色に光っている。湖を囲むように連なる山々も見える。私たちは、山頂から中禅寺湖が見下ろせることを知っている。それでも、その神々しさに圧倒された。

     でも、勝道上人はそれを知らなかった。長年の苦労の末に極めた山頂で、この湖が目に飛び込んできたのだ。勝道上人はただ恍惚こうこつとして眺めていたと伝えられている。

     満天の星の美しさ、頂上までの寒さ、ご来光の暖かさ……。勝道上人が日光を信仰の場所に選んだのも、雄大な自然に人間の力を超越したものを感じたからではないだろうか。

    • 堂々とした姿の男体山
      堂々とした姿の男体山

     ◎三つの社◎

     男体山をご神体とする日光二荒山神社には三つの社がある。勝道上人が登頂した時にまつった山頂の「奥宮おくみや」、中禅寺湖を望む景勝地に建てた「中宮祠ちゅうぐうし」、日光市山内地区の「本社」だ。

     登拝門がある中宮祠は、本社と奥宮の中間にあるとしてその名がついた。

     登拝門は毎年5月5日~10月25日に開かれ、夜間に登れるのは8月1~7日の1週間。奥宮までは約6キロで、標高差は約1200メートル。一般的に約3時間半で登頂できる。

     男体山は日光という地名の由来でもある。男体山はかつて観音菩薩の住む「補陀落山ふだらくさん」と呼ばれていた。そこから「二荒山ふたらさん」となり、「二荒」を音読みした「ニコウ」から「日光」の名が生まれた。

    2014年08月21日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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