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愛らしい耳食べて息災 耳うどん 佐野・仙波

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手際よく生地を耳の形にしていく野部さん(2020年12月21日、佐野市仙波町で)
手際よく生地を耳の形にしていく野部さん(2020年12月21日、佐野市仙波町で)
濃い茶色のつゆにダイコン、ニンジンを入れ、鳴門巻きと青菜を添えた耳うどん(12月21日、佐野市仙波町で)
濃い茶色のつゆにダイコン、ニンジンを入れ、鳴門巻きと青菜を添えた耳うどん(12月21日、佐野市仙波町で)

 「昔は、どこの家も正月といえば、耳うどんを食べたんだ。子供時分は、こたつを囲んで母親と一緒によく作ったなぁ」。打ちたての耳うどんをすすりながら、例年は冬場、佐野市仙波町の市農林漁家高齢者センターで耳うどんを振る舞う野部利司としじさん(82)が懐かしそうに笑った。

 「耳うどん」は、同市北部の山あいにある仙波地区を代表する正月の晴れ食だ。同地区を流れる仙波川は、昔から水量が少ないため、かつては水田がほとんどなく、麦やそばの栽培が主流。「お嫁さんはそば、うどんが打てて一人前」と言われたほど、粉食が盛んだった。

 言い伝えは色々ある。「耳うどん」の耳は、悪い神様の耳であり、その耳を食べてしまえば、家の話を聞かれず、一年間悪いことが起こらない。また、耳を食べてしまえば、悪口が聞こえないため、近所との交際が円満にいくなどだ。

 栃木の昔の食生活をまとめた「聞き書栃木の食事」によると、耳うどんは暮れのうちに夜なべをして作り、ゆでてから冷水につけておいた。年始回りの来客があれば、すぐに汁を作り、汁の中でさっと煮込んで出したという。手間をかけず、すぐに温かくておいしいものを振る舞える機能性も備えていた。

 野部さんによると、打ち方は通常のうどんと同じだが、生地を切るところからが特徴的だ。生地を麺状にせず、マッチ箱大の長方形(4センチ×6センチ)に切る。長方形の生地は、横長に二つ折りにして、手前をたたみ込むと、名前の由来となる耳の形ができあがる。ひな人形の着物のようにも見えて愛らしく、「日本一短いうどんかもな」と話しながら、野部さんはきれいに並べた。

 耳形の生地は、大釜でゆでる。釜の中の生地の様子は、ちょうが舞うようだ。ゆで上がったら、すぐに冷水でしめ、再びだし汁でさっと煮込む。器に盛り、鳴門巻きと青菜を添えれば完成だ。だしは、鶏としょうゆが多いという。器から湯気とともに立ち上る香りが食欲をそそり、寒い冬場に愛され続けた理由もうなずける。

 仙波地区を代表する郷土料理も、今では作る家庭が数えるほどという。野部さんのいとこ、同市仙波町の新里にっさとサダ子さん(82)宅では、ここ数年、体調面の問題もあって作れていないが、正月になると家で耳うどんをこしらえるのが習慣になっている。今は大学生や社会人になった12人の孫が子供の頃、年末になると東京や宇都宮市などから集まり、「おばあちゃん、今年も耳うどん一緒に作ろう」と大はしゃぎだったという。新里さん宅の耳うどんは、ニンジンやダイコンのほか、刻んだネギやかまぼこを入れる。「子供や孫たちに新年もいい話があるようにとの思いを込めて作るのよ。来年は久々に孫たちと耳うどんを作りたいね」と話した。

 同市農林漁家高齢者センターでも今期は作り手不足のため、販売を断念した。それでも、野部さんは「仙波が誇る郷土料理で、子供の頃から家族で作った思い出の味。何とか後世に伝えていきたいな」と語る。

 ちなみに耳うどんは今年も、同市相生町の「野村屋本店」などでは食べられるという。

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1749885 0 とちぎ豊穣記 2021/01/04 05:00:00 2021/01/04 05:00:00 2021/01/04 05:00:00 手際よく生地を耳の形にしていく野部さん(12月21日午後2時13分、佐野市仙波町で)=井上暢撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210105-OYTAI50037-T.jpg?type=thumbnail

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