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小規模醸造所が手掛ける「クラフトビール」の人気が県内でも高まっている。値段は高めだが、個性的な香りや苦みが若い世代を中心に好評だ。新型コロナウイルスの影響で直近の出荷量は落ちているが、「家飲み」需要が高まったことを受け、新規参入する事業者も出ている。(井上暢)
宇都宮市の「道の駅うつのみや ろまんちっく村」の一角に、大谷石で造られたブルワリー(ビール醸造所)がある。中をのぞくと、巨大なタンクがずらりと並び、
1996年、県内でいち早く誕生したブルワリーで、宇都宮産の麦を使いコクと苦みが特徴の「麦太郎」や、ギョーザに合う「
県内のブルワリー8社で構成する「栃木クラフトビール推進協議会」によると、クラフトビールはかつて「地ビール」と呼ばれ、94年の酒税法改正でビールの小規模生産が解禁され、ブームに沸いた。全国に次々と醸造所が開業したが、2000年代初めにはブームは下火になった。
しかし、18年の酒税法改正で麦芽使用率が引き下げられ、「ビール」の定義が緩和。ゆずやレモンなどの風味を加えた酒も、新たにビールとして販売できるようになり、消費者の選択の幅が広がったことでブームに再び火が付いたという。
同協議会が発足した12年の時点で、県内にあるブルワリーは4社だったが、17年以降に開業が相次ぎ、今では9社に増えた。近年はビアバーが増加したほか、スーパーやコンビニにも販路が拡大。19年には県内産出荷量が、統計を取り始めた13年の2倍近い約32万リットルに上った。コロナ下の20年は、飲食店の休業で約24万リットルに落ち込んだが、家飲み需要に支えられて昨年は約25万リットルと持ち直し始めた。
この状況に目をつけ、昨年新規参入したのが、野菜の卸売りなどを手掛ける小山市の「Sunフーズ」。「
出荷できない規格外のコメを使い、フルーティーな香りと爽やかな飲み口が売りの「オヤマエール」(税込み438円)など、定番3種と期間限定4種のビールを製造。毎月1000リットルを出荷して100万円ほどの売り上げを出し、市内のスーパーでは売り切れになるなど、着実にファンを増やしているという。
小山市はビールの原料・二条大麦の生産量が全国トップクラスを誇る。栗原宏社長(45)は「地元産の農作物を使ったクラフトビールで、栃木県、特に小山市の魅力を発信し、イチゴやギョーザに負けない名物にしていきたい」と意気込んでいる。