10年の集大成 笑顔届ける
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◇来月で解散するお笑いコンビ「セカンドストーリー」
長谷川加奈さん 25
桜井貴恵さん 25
結成10年となる5月、徳島市内で行う漫才とコントの単独ライブを最後に解散する。ツッコミ役の長谷川さんは今後もお笑い芸人を目指し、ボケ役の桜井さんは新たな道に進むことを決めた。最初で最後となる単独ライブに向け、「徳島の人たちに10年間の集大成を披露し、最高の笑顔を届けたい」と意気込む。
始まりは高校に入学した2008年春。お笑い芸人に憧れていた長谷川さんが幼なじみの友人と桜井さんを誘い、お笑いグループを結成した。しかし、その夏に高松市で開かれた高校生の漫才コンテストで初披露したネタは観客にはうけず、あえなく予選敗退した。
「悔しさよりももっと笑いを取りたいという思いが強くなった」と長谷川さん。同じ思いを抱く桜井さんと「セカンドストーリー」のコンビ名で活動を始めた。
放課後や休日だけでなく、修学旅行先の北海道のホテルでもネタ合わせを続け、自らイベント会社に売り込んだ。ただ、芸能事務所には所属しなかった。何にも縛られず、幅広い仕事を経験したかったからだ。
大学進学後も学業と両立し、ネタ合わせも真剣に打ち込んだ。深夜に公園で練習していた時、熱くなりすぎて大声になり、けんかと間違われ、警察に通報されたこともあった。ネタの数はいつしか100本以上になり、余興やイベントでも声がかかるようになった。
「友人らと旅行や学園祭などを楽しむよりも、自分たちの舞台が周囲の人を喜ばせていることにやりがいを感じた」と声を合わせる。
次第に阿波弁で放つテンポのよいやり取りが県内でも評判に。11年秋から3年間、徳島市のコミュニティーFM局の冠番組に抜てきされ、四国放送の人気番組にもレギュラー出演した。
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しかし、転機は17年に訪れた。桜井さんが大学で取得した管理栄養士の資格を生かし、「新しい人生を歩みたい」と思うようになった。お笑い芸人を続けたい長谷川さんとのすれ違い――。何度も話し合いを重ねたが、今年に入ってそれぞれが別々の道を進むことを決断した。
長谷川さんは「今のコンビ名で地域に密着した〈ピン芸人〉を目指す」と語り、桜井さんも「2人でやってきたコンビ名を残し、継続してやってくれることは素直にうれしい」と感謝する。
徳島を笑顔で包んだコンビは最後の舞台を終えた後、それぞれの新たなステージを目指し、歩み始める。
<はせがわ・かな、さくらい・きえ> いずれも徳島市出身。幼稚園の頃、ピアノ教室で出会い、同じ小中高に通った。高校1年で別の友人を含む3人で「セカンドストリート」を結成。2009年から現在のコンビ名になった。1月10日の「110番の日」には、県警の一日通信指令官も務めた。
◆取材後記
◇多くの県民の記憶に
実は5年ほど前までは、ボケとツッコミの役割が逆だったという。10年間で書き込んだ8冊の「ネタ帳」を見ながら、試行錯誤を繰り返して成長してきた2人の姿を想像した。
そんな2人を常に支えていたのは地元の人たちだ。当初は大阪や東京に活躍の場を求めた。だが、「がんばりよ」と声をかけられるなどの応援を受けるうちに、「徳島を笑顔にすることで恩返ししたい」と思うようになったという。
2人の漫才は見られなくなるが、徳島が生んだ「ご当地芸人」として、多くの県民に記憶されることは間違いない。(三味寛弥)
■来月5日単独ライブ
セカンドストーリーの単独ライブは、5月5日午後6時30分、徳島市のとくぎんトモニプラザで開演する。会場の一角では、これまでに使った小道具なども展示する。チケットは同プラザなどで販売。前売りは一般1000円、小学生以下500円。当日は500円増し。問い合わせは運営スタッフ(080・4036・5417)。