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地ビール 神山に恩返し

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 ◇2年前に定住、醸造所を開設した スウィーニー・マヌスさん 38

「生まれた味を楽しんで」と話すスウィーニーさん(神山町で)
「生まれた味を楽しんで」と話すスウィーニーさん(神山町で)

 ボコボコボコ。銀色に輝く醸造タンクの中から聞こえる発酵の音に笑みがこぼれた。何となくの思いつきから始まった地ビール造り。あれから約1年半。「ようやくここまできました」。片言の日本語にも自信があふれる。10日、神山町発の地ビールをいよいよ発売する。

 アイルランド出身。音響や映像制作の技術者としてオランダ・アムステルダムを拠点に働いていた2013年、神山町で開かれた芸術作品を制作するイベント「神山アーティスト・イン・レジデンス」に参加し、3か月間滞在した。

 住んでみて気に入ったのは「community(地域社会)」そのものという。サテライトオフィスの誘致など移住促進に力を入れる同町。北米や東南アジアなども訪ねたが、「若者が何かをしようと集まってくる田舎なんて珍しい」と驚いた。

 温かく受け入れてくれる地元の人たちの存在も大きかった。「自分もこの町で何かをしてみたい」。16年2月には生活拠点そのものをオランダから移し、映像制作に取り組んだ。

 おいしい野菜や肉。町の豊かな食生活に満足していたが、「どうしてビールだけはどこも同じ味なんだろう」と思った。日本全国、出てくるのは大手メーカーの同じ銘柄ばかり。「神山町だけにしかないビールを造ることが町への恩返しになるのでは」と昨年1月、一念発起した。

 醸造所を建てるための敷地は、町の知人が快く貸してくれたが、初期投資だけで1000万円以上かかった。ビール造りは素人。カナダから醸造タンクを買い込んだり、イギリスまで足を運んで醸造所で働いたりし、インターネットで知識を得ながら少しずつ準備を進めた。醸造免許が取得できたのは、今年3月。早く新しいビールを届けたいと、すぐに仕込みに取りかかったという。

 提供する発泡酒やビールは、4種類。アイルランドの有名な黒ビール「ギネス」や、人気のベルギービールなどをモデルに風味付けしたが、こだわったのは「神山らしいアレンジ」。町産の小麦を使い、町内の桜や梅、かんきつなどで香り付けをし、オリジナルの〈神山ビール〉に仕上げた。

 「僕がこの町に溶け込んだように、このビールも受け入れてもらえるように育てていきたい」。造りたてのビールから、初々しい香りが漂っていた。

 ◇ スウィーニー・マヌス 1979年、アイルランド生まれ。音響技術者になるため、21歳でオランダへ。音楽業界などで働く。映像制作にも携わって世界各地を回り、日本には神山町以外にも東京や青森県八戸市などにも立ち寄ったことも。同町に定住するまでは、何度も同町とオランダを往復した。地ビールに関する問い合わせは、スウィーニーさんのホームページ(https://www.kamiyamabeer.com)。

 ◇取材後記 すっかり町に溶け込む

 徳島で知った言葉「やったらええんちゃう(Just try it!)」が大好きという。ワクワクしながら暮らしたいと世界を巡り、日本で暮らすことを決めた時もそれほど不安を感じなかったという。

 だが、地ビール造りに関しては、「完成してホッとした」と本音も。予想以上に資金がかかり、醸造免許が取得できるかなど気をもむことの連続だったことも、今だから笑える。

 最後までやり通せたのは、自分だけでなく、多くの人に喜んでもらえると信じていたからという。すっかり地域に溶け込んだスウィーニーさんと話しながら、地ビールが徳島の人たちに受け入れられる日はそう遠くはないと感じた。(古市豪)

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25088 0 人あり 2018/06/08 05:00:00 2018/06/08 05:00:00 「神山町で生まれた味を楽しんで」と話すスウィニーさん(神山町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180607-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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