<中>市長交代 計画白紙に
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新町西地区の再開発ビルに整備することになった新ホールは1500席の大ホールと、300席の小ホールなどを備える規模の施設として計画。地権者の組合から市がホール部分を買い取って、2018年度末には完成する予定だった。
ホール整備と再開発、大きな懸案を一挙に解決できる“妙手”のはずが、出ばなをくじかれる格好になった。県が「県費の補助なしに事業が遂行できるのか」と都市計画決定に難色を示したためだ。知事の飯泉は計画に同意せず、反発した市側と対立するようになった。
さらに、建設資材や人件費の高騰で、市のホール取得費は最終的に156億円に膨らむことも分かった。いくつもの障害はあったが、それでも何とか着工直前までこぎ着けた。あとは、地権者の土地・建物の権利に関する手続きだけとなったときに登場したのが、現市長の遠藤彰良だった。
「数十億円でホールは建てられるはず。こんな税金の無駄遣いはしません」
16年3月の徳島市長選で、遠藤は再開発事業の白紙撤回を公約に掲げた。再開発とホールの一体整備を進めてきた前市長の原秀樹は敗れ、ホール建設は振り出しに戻った。
ただ、遠藤は「文化センターはなくてはならない」とも公約。就任後、まずセンターの耐震改修が可能かどうか検討するよう指示したが、30億円以上の費用と時間がかかり、舞台が狭くなるなど機能も損なわれると判明。結局、新設に決まった。
新町西地区の地権者らは事業推進を求めたが、遠藤は「ホールは買い取らない」と方針を曲げず、組合は市を相手取って訴訟を起こした。
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新ホール建設に向け、市は16年10月、有識者会議を発足。大小ホールやリハーサル室を備えるなど再開発事業で考えられていた計画を軸とすることが提案された。建設候補地を決めるため、別に有識者会議も設けた。議論にあがったJR徳島駅西側、旧動物園跡地、市立文化センター跡地の内、駅西側を優先的に検討するよう答申がなされ、市も「駅直結は魅力がある」と駅西側に決定した。
再開発事業での計画は約1万8000平方メートルにホールが入る再開発ビルなどを整備する。十分な広さがある前提でホールの規模も決められた。一方、駅西側は約4800平方メートル。今までの方向性通りに造ろうとすると、無理やり機能を押し込めることになるのではと市議会が危惧し、「1500席は無理」と批判。だが、市が計画を見直すことはしなかった。
18年2月に明らかになったホールの概要は、地上4階、地下1階、大ホール1500席、小ホール200席の規模。事業費は87億円を見込み、23年度の完成を目指すとした。
遠藤の就任から2年弱。建設に向けた条件がようやく仕切り直され、スタートラインに立ったかに見えたが、今度は、市がこだわってきたスピード感が裏目に出た。(敬称略)