<3>高知家へおかえり

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ひろめ市場で酒を酌み交わす小笠原さん(左)と黒笹さん(高知市で)
ひろめ市場で酒を酌み交わす小笠原さん(左)と黒笹さん(高知市で)

◇移住者、観光客も「大家族やき」

 「正直なところ、こんなに受け入れられるとは思わなかった。『高知家』が本当に県民になじみ、浸透していることを実感する」。忘年会シーズンを迎え、活気あふれる高知市中心部の「ひろめ市場」で、高知県地産外商公社のプロモーション戦略局長、小笠原慶二さん(53)は杯を傾けながら、自ら手がけたキャンペーンについて語る。

 元雑誌編集者で2012年に移住してきた黒笹慈幾やすしさん(68)が言葉をつないだ。「短所も含めて愛せるのが『家族』。まさに高知にぴったりのキャッチフレーズだよ」

 小笠原さんが「高知家キャンペーン」を始めたきっかけは12年にテレビ放映された、高知県四万十市の地域おこし協力隊員が主人公のドラマ「遅咲きのヒマワリ」だった。

 高知市出身の小笠原さんは大学を卒業後、マーケティング(市場調査)会社やIT企業などを経て、「ふるさとの情報発信がしたい」と同公社に転職したばかり。ドラマの話を知り、予算をかき集めてPR映像を作り、ドラマの直前に放映するようにした。このPR映像が好評で、翌13年に「今度は高知県の宣伝部を作ろう」と企画がスタートした。

 これまでのように名物や観光名所を単体で売り出すのではなく、「移住」「地産外商」「観光」をひとまとめにしてPRできるキャッチフレーズを――。そんな時に広告会社のスタッフから聞いたのが「高知はみんな親しく話しかけてきますね。人との距離感が近い気がする」という言葉だった。

 高知の人は酒を飲むと誰とでも仲良くなり、まるで親戚のように話しかけてくる。それは小笠原さんが抱いていたテーマ「ローカル(地方)&ノスタルジー(郷愁)」にも合致していた。13年6月、高知市出身の女優・広末涼子さんを起用した動画で「高知家」のキャンペーンをスタートさせた。

 黒笹さんは東京生まれ、東京育ち。映画化された人気漫画「釣りバカ日誌」の初代編集担当者で、主人公・浜崎伝助のモデルになったほどの釣り好きだ。11年の東日本大震災で無力感を感じたことをきっかけに、退職後の12年、高知に移住した。

 「高知家」のプロモーション映像に出演したほか、現在では、高知県内の自治体に観光振興策や移住の施策をアドバイスしたり、高知大で教べんを執ったり。「ライク(好み)がラブ(好き)に変わると、人々は移住する。その手助けをするのと、高知が好きな人を増やすのが、私の今の役目です」と話す。

 「高知家」のロゴマークは、Tシャツ、文具などから居酒屋の足ふきマットまで至るところで見かける。高知県庁入り口の看板前では、カップルが婚姻届を手にしながら記念撮影する姿も見られるようになった。キャンペーン開始後、17年に高知県内を訪れた観光客は過去最高の440万人を記録、移住者は同年度に約1200人に達した。

 ひろめ市場ではこの日も、大勢の客が杯を傾け、顔を赤らめながら料理に舌鼓を打った。名物のカツオ、維新の志士・坂本龍馬など、さまざまな話で盛り上がる。

 小笠原さんは言う。「暗いことがあっても悲しいことがあっても、周囲を巻き込んでみんなでワイワイ騒ぐのが高知流。この雰囲気が『高知県は、ひとつの大家族やき』なんですよ」

(今村真樹)

 ◆衝撃・面白く自治体PR

 香川県は2011年10月、地元出身の人気俳優・要潤さんを副知事役に抜てきし、「うどん県に改名」と動画で発表、話題となった。徳島県は14年から「VS東京」を掲げ、PR動画などを制作している。

 自治体の広報・PRに詳しい富士通総研経済研究所の榎並利博・主席研究員は「スマートフォンの普及で動画や写真の閲覧、SNSを使った『シェア(共有)』が簡単にできるようになったことで、各自治体ともインパクト(衝撃)や面白さを重視するようになっている」としている。

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60942 0 次代の扉 四国の平成 2019/01/04 05:00:00 2019/01/04 05:00:00 ひろめ市場で酒を酌み交わす小笠原さん(左)と黒笹さん(17日午後7時28分、高知市で)=今村真樹撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190103-OYTAI50021-T.jpg?type=thumbnail

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