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◇世界初「DMV」実用化へ
ゴールドと白のLED電球約2600個が、ワンマン列車の天井をきらびやかに彩る。約8・5キロの路線にはトンネルが17か所。そのおかげで昼間でも車内は幻想的な雰囲気に包まれる。第3セクター「阿佐海岸鉄道」(あさてつ)のイルミネーション列車。今では冬の風物詩だ。
海陽町と高知県東洋町を11分で結ぶ。停車はわずか3駅。地域にとっての“足”として開業したが、過疎高齢化が直撃し、赤字経営が続いている。打開策は輸送のための乗り物からの脱却にある。
あさてつは、生みの苦しみを味わった。前身は国鉄時代の阿佐東線。国鉄時代に「四国循環鉄道構想」があり阿佐東線も構想に組み込まれていた。構想による工事は1965年に開始。阿佐東線も着々と敷設されていったが完成目前の80年、国鉄再建法が施行されたあおりで中断した。8年後に徳島、高知両県や沿線自治体が中心となって、阿佐海岸鉄道株式会社をつくり、路線を完成させた。
開業した92年度の乗客数は17万6893人と年間の最多乗客数を記録。当初は通学する生徒らでにぎわったが、沿線の高校が閉校するなど過疎化にさらされて乗客が減り、経営は悪化。2017年度の乗客数は6万782人となった。開業以降赤字が続く。
沿線の乗客が増える見込みはない。ならば「乗りに来たくなる鉄道を目指そう」と考えたのがイベント列車の運行だ。イルミネーション列車のほか、男女の出会いの場の「恋活列車」、落語家が一席を披露する「寄席列車」……など工夫を凝らす。企画・情報発信担当の平道知代さん(45)は「地域の人と一緒に楽しめるイベントを企画して盛り上げていきたい」と意気込む。
新たに導入を計画しているのが、鉄路と道路を走る次世代の乗り物「DMV(デュアル・モード・ビークル)」だ。2020年東京五輪までに世界初の実用化を計画。道路を走ればコースも自由自在に設定できるといい、鉄道会社の枠をとびこえた運用が可能だ。観光地に直接、人を運ぶことができる。将来的には高知県室戸市まで走らせることも視野に入れている。
そのほか、医療機関の送迎や災害時の移動手段など、地域住民の足として活用できるとの期待も大きい。現在は車両製作や導入に合わせた施設の改築工事を進めている。専務の宮崎祐伸さん(62)は「DMVを定着させて人を呼び込み、地域の活気を取り戻したい」と未来を描く。(三味寛弥、おわり)
◆JRは観光列車
鉄道の利用客低迷は、四国の全域に路線を持つJR四国(本社・高松市)も同様だ。2018年3月期末の連結決算では、本業のもうけを示す営業赤字は99億円だった。1993年に約6600万人だった輸送人員も2016年で約4600万人と減少傾向にある。
そこで導入したのが「観光列車」だ。輸送手段ではなく乗ることを目的化した。松山―八幡浜(愛媛)間の「伊予灘ものがたり」や、多度津(香川)―大歩危間の「四国まんなか千年ものがたり」など個性的な列車が風光