「100万枚撮っても 飽きない」 ツリーに魅せられた写真家たち[連載・ツリーとともに](3)

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 ピンクに色づいた桜並木、五月晴れにはためくこいのぼり、大空へと飛び立つ旅客機――。どれもなにげない風景を切り取ったスナップショットだが、東京スカイツリーが写り込むと、奥行きのある印象的な写真へと変わる。

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 墨田区吾妻橋のすみだリバーサイドホールで先月2日まで6日間開催された写真展には、ツリーをテーマにした90作品が一堂に並んだ。11回目となる今回は1000人近くが来場し、盛況のうちに終わった。

奥田さん(左から2人目)らスカイツリー定点観測実行委員会のメンバーたち(先月25日、墨田区石原で)

 出展したのは、10年以上にわたってツリーを撮り続けている奥田一真さん(68)ら「スカイツリー定点観測実行委員会(スカテン)」のメンバー5人。代表を務める奥田さんは「同じ題材でも飽きが来ない。ツリーはいつまでも魅力的な被写体ですね」と笑顔で話す。

始まりは「成長記録」残す定点観測

 2009年夏、ツリーの建設現場に程近い墨田区石原の自宅マンションから、大型クレーンが立ち並ぶのが見え、ツリーが気になり始めた。「600メートルを超えるタワーって、どれだけ高いんだろう」。周辺は屋根の低い家屋ばかりで、想像がつかない。手元には「いつか趣味に」と買っておいたカメラがあった。「せっかくだから記録を残そう」と思いたった。

 近所の喫茶店で、プロカメラマンが建設中のツリーを定点撮影する方法を指南してくれる講座があると知り、すぐに応募。撮影地点が近すぎると完成時にはフレームからはみだしかねないと教えられて、思った。「うちって定点撮影にうってつけじゃないか」。自室の窓から、空へ伸びてゆくツリーを撮影し始めた。

 撮った写真は誰かに見せたくなるもの。講座で知り合った仲間たちでスカテンを結成し、10年に初の写真展を開いた。メンバーは一時、20人を超え、ヘリコプターでの空撮も敢行した。

 だが、ツリーが完成してしまえば、もうその“成長ぶり”は撮れない。仲間たちは一人また一人とスカテンから去っていった。

ツリーのある風景、発見が広げた輪

 奥田さんも、天体や航空機などいろんな被写体を追っていたが、そのうちツリーと一緒に撮影するのが面白くなってきた。

 長時間露光を駆使し、ツリーの頭上を巡る星々の軌跡を撮影したり、ツリーを横切って地平線に沈む三日月を2分半おきにシャッターを切って合成したり――。そんな作品を写真展に出展していたら、思わぬ反応があった。

 石川隆憲さん(47)は5年ほど前、初めて写真展を鑑賞した際、ツリーの幻想的なライティングと星の光跡を組み合わせるなどした作品の数々に驚いた。

 ツリーは通勤中のJR総武線の車窓から毎日眺めていた。「見慣れた景色も、撮り方次第でこんなにも特別なものになるのか」とその場でスカテンに加入した。

 富士山をバックに江戸川沿いの桜並木とツリーを撮るなど、ほかの人があまり狙わないような構図を探しては、撮影に明け暮れている。その数は100万枚近くに上る。

 石川さんのように、ツリーのある風景にひかれる人たちが、少しずつだがスカテンに加わるようになった。

 「雲間から差し込む光の当たり具合で、ツリーの印象が一瞬で変わるから目を離せないんだ」「早くコロナ禍から活気を取り戻した街並みをツリーと絡めて撮りたいよ」

 メンバーがひとたび集まれば、カメラ談議は尽きない。「撮り続ければ続けるほど、最高のショットを写せるんじゃないかと思わせてくれるんです」。奥田さんはそう言って、ツリーをいとおしそうに見上げた。

スカテンのメンバーたちが撮影したツリーのある風景

江戸時代の絵に予言?

歌川国芳の「東都三ツ股の図」、ギャラリー紅屋提供=

 江戸時代の浮世絵師・歌川国芳(1797~1861年)の作品「東都三ツ股の図」=写真(左は塔の拡大)、ギャラリー紅屋提供=に、東京スカイツリーが描かれていた――。ツリー開業前の2011年、そんな話題が世間をにぎわせた。

 絵は中央に隅田川、対岸に黒い火の見櫓(やぐら)が描かれているが、その隣の高い塔がツリーと似ており、国芳の予言ではないか、というのだ。

 「正体は井戸掘り用の櫓でしょう」。昨年秋に国芳没後160年展を企画した太田記念美術館(渋谷区)の上席学芸員・渡辺晃さん(45)はそう解説する。だが塔は周りの民家より10倍以上高い。擬人化された動物の絵などユーモアあふれる作品で知られる国芳だけに、「高さを誇張して、見る人を面白がらせたかったのでは」と渡辺さん。江戸の人たちも高い塔にロマンを抱いていたのかもしれない。

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2654612 0 企画・連載 2022/01/11 07:05:26 2022/01/10 17:04:34 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/連載3飛行機-1.jpg?type=thumbnail

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