空白期経て 2頭来日…東京新パンダ物語(中)

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中国側と強気の交渉

床をはうパンダの赤ちゃん(1日、台東区の上野動物園で)=東京動物園協会提供
床をはうパンダの赤ちゃん(1日、台東区の上野動物園で)=東京動物園協会提供

 ふわふわの毛をまとった赤ちゃんパンダが寝返りを打つと、傍らの母パンダが、いとおしそうに見つめていた。

 上野動物園が今月2日に公開したジャイアントパンダの赤ちゃんと母親のシンシンの映像を見た小口健蔵さん(66)は、6年前を振り返った。

 「あの時、パンダを日本に連れてきて本当によかった」


中国から日本に出発するシンシン(2011年2月、中国・四川省で)
中国から日本に出発するシンシン(2011年2月、中国・四川省で)

 赤ちゃん誕生につながる物語は、3代目ペアのオス「リンリン」が死んで、35年以上に及ぶ上野のパンダ飼育史が途絶えた2008年4月まで遡る。上野の「象徴」が消えてから1年後、動物園を所管する都建設局の部長だった小口さんは、中国に向かった。新しいペアを上野に連れてくるための交渉を任されていた。

 勝算はあった。リンリンが死んだ翌月、来日した中国の胡錦濤国家主席(当時)が、パンダの貸与を表明していたからだ。

 だが、事はそう簡単には運ばなかった。それまで中国から貸与されたパンダは全て無償だったが、パンダの保護強化に乗り出していた中国は、各国との交渉で、ペアの貸与と引き換えに年間100万ドル(約1億円)の「保護資金」を要求するようになっていた。

 当時、上野動物園は入園者が激減し、新たなパンダを求める声が高まっていた。一方で、「そこまで大金を出す必要があるのか」といった疑問の声も上がった。

 世論が揺れる中、交渉役の小口さんは「中国のいいなりではない」ということを示すため、「年50万ドル」という強気の金額を提示し、中国側に値下げを迫った。

 交渉の末、中国側は10年2月、「年95万ドル」という数字を初めて提示した。わずかでも中国側の譲歩を引き出した点を評価した上層部が、妥結を決断した。

 妥結後、日本に連れて行くパンダを選ぶために、小口さんは中国の動物園を訪れた。この時、同行したのが、当時上野動物園の飼育展示課長だった福田豊・現園長(57)だ。

 福田園長によると、中国側から健康状態や血統、繁殖経験の有無について説明を受けながら複数のパンダを紹介された。その中で目に留まったのが、メスの「シンシン」と、オスの「リーリー」だった。2頭とも他のパンダより若くて体格がしっかりして、毛のツヤも良かった。

 「運命的な巡り合わせだったと思う」と、福田園長は感慨深げに語る。

 都と中国野生動物保護協会の協定が結ばれ、シンシンとリーリーの貸与が正式に決まったのは10年7月。同月、小口さんは、都庁を退職した。

 2頭が初公開された11年4月1日、上野動物園には、開園前から大勢の人が列を作った。前月の東日本大震災で世の中の雰囲気は暗かったが、愛くるしい姿に皆がくぎ付けになった。「パンダは人々を笑顔にする特別な動物」と、改めて思った。

中国側との交渉の経緯を振り返る小口さん(新宿区で)
中国側との交渉の経緯を振り返る小口さん(新宿区で)

 シンシンとリーリーは12年7月、初めての赤ちゃんが生後6日で死ぬという悲劇に見舞われた。そんな試練を乗り越え、2頭は今年、再び子宝に恵まれた。

 パンダはいずれ、中国に返すことになっている。将来、中国と再び交渉する日が来るかもしれないが、小口さんは、「日本の繁殖技術が認められれば、今後も多くのパンダを任せてもらえるはず」と確信する。

 かつて、幼い長男と長女の手を引き何度も上野のパンダを見に行った小口さん。赤ちゃんパンダの一般公開は今冬になる見込みで、「今度は孫2人を連れていこう」と心待ちにしている。

都と中国野生動物保護協会の協定

 都は10年間にわたり2頭のパンダを年95万ドルで借り、その間、飼育や子育てに関し中国から専門家の派遣や研究データの提供などを受けられる――との内容。中国から借りたペアにより生まれた赤ちゃんは、次代の繁殖のため中国に返すが、具体的な返還時期は明示されていない。

 

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13801 0 東京新パンダ物語 2018/03/20 17:35:00 2018/03/20 17:35:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180320-OYTAI50007-1.jpg?type=thumbnail

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