気の抜けない日々続く…東京新パンダ物語(下)
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和歌山からもエール

夏休みが始まって間もない7月25日。和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」は、朝から多くの入園者でにぎわっていた。中でも注目を集めていたのは、生後10か月のジャイアントパンダ「結浜(ユイヒン)」(メス)だ。
「こっち見た、かわいい」
母パンダのまねをしてタケをかじったり、遊具の上で寝そべったり。コロンと丸い体が動くたびに、大きな歓声が上がった。
同施設では、これまでに15頭のパンダが生まれ育ってきた。赤ちゃんパンダは、人間の子どもと同じようにちょこんと腰を据えて座り、両手を使って物を食べる。
「高い所からお母さんの上に飛び込むなどおてんばで、甘えん坊。そんな姿が愛らしくて、皆を
飼育員として過去4回のパンダの出産に立ち会った熊川智子さん(44)は声を弾ませた。そして、続けた。
「でも、こんなに手のかかる動物はほかにいないな、とも思います」

パンダの赤ちゃんは、最初は毛もなく、体重も150グラムほどと小さく、未熟状態で生まれてくる。
母パンダは、赤ちゃんを抱いて温め、身体をなめて感染症から守り、授乳で栄養を与える。上野動物園の母パンダ・シンシンも、6月に出産してからしばらくは、自分はエサも食べずに赤ちゃんを胸に抱き、熱心に世話をしていた。
生後40~50日で目が開き、同3~4か月頃から歩き始める。1歳頃に永久歯が生えそろい、硬いタケなども食べられるようになる。飼育員らはその過程を見守り、健康状態に気を配る。
アドベンチャーワールドの結浜は今、体重が20キロを超え、元気に動き回っているが、行動範囲が広がったことで、身体の大きい親パンダの下敷きになる事故の心配も出てきた。同施設では飼育員らが夜中も常駐し、異変が起きればすぐ対応できる態勢を整えている。
「パンダはちゃんと保全しないと育たない動物なのだと、改めて思います」
パンダ飼育の難しさ、保護の大切さを知る熊川さん。東京都出身で「上野のパンダ」のファンでもあり、シンシンの出産の喜びは大きい。
「一つハードルを越えたら、また次の課題がある。気を抜けない状態が続きますが、順調に成長している様子がうれしいですね」と語る。
上野動物園のパンダの赤ちゃんの名前公募は今月10日で締め切られ、インターネットだけで全国から20万件以上の応募が寄せられた。
日本で生まれたパンダは、大きくなると繁殖のために中国へ返されるが、日本で付けた名前が中国でもそのまま使われる可能性がある。
アドベンチャーワールドのパンダは、地元・白浜から取った「浜」の字が使われている。熊川さんによると、中国に戻った後も繁殖で実績を残し、現地では「浜家」と呼ばれて名門の系統となっているという。
上野動物園の赤ちゃんの名前は、生後100日を迎える9月下旬には発表される見込みだ。福田豊園長(57)は、「みんなに夢を与えるような名前がついて、たくさんの人に愛される存在になってほしいですね」と、願いを語った。