コロナ女性の貧困加速

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NPO法人「レスキュー・ハブ」 坂本新代表 50
NPO法人「レスキュー・ハブ」 坂本新代表 50

 

■NPO法人「レスキュー・ハブ」 坂本新 代表

 都内随一の歓楽街として知られる新宿・歌舞伎町。日が沈むと、その一角にポツポツと女性が集まってくる。20、30歳代が中心だが、少女や高齢の女性の姿もある。ガードレールに腰掛けてスマートフォンをいじったり、ぼんやりと座り込んだり。値踏みするように近づいてきたスーツ姿のサラリーマンや初老の男性と言葉を交わすと、男女は夜の街へと消えていく。

 「コロナ禍以降、生活苦で体を売ることを迫られる女性が間違いなく増えている」。NPO法人「レスキュー・ハブ」(渋谷区)代表で、4年前から歌舞伎町で女性を支援する活動を続ける坂本新さん(50)が危機感を強める。

 坂本さんによると、2020年4月に初の緊急事態宣言が発令されてから、こうした光景が歌舞伎町周辺で見られるようになった。それまで、ある公園では客を待つ女性は5人ほどだったが、20年の夏には10倍の約50人に上った。今も多い日は20人ほどが立つ。

 非正規社員だったり、飲食店や風俗店で働いたりしていたが、コロナ禍での派遣切りや勤務先の閉店で収入が激減したのだという。都の労働力調査によると、19年夏に155万人だった都内の女性非正規社員は、20年夏には145万人に。10万人近い女性が職を失った可能性があることを示すデータは波紋を広げた。

 「お話を聞かせてください」と書いたカードをポケットサイズのメイク落としや汗ふきシートに添え、坂本さんは女性たちに配って歩く。最初は目も合わせてくれないが、何度も顔を合わせるうちに少しずつ心を開いてくれるようになる。

 「ホテルで清掃の仕事をしていたが、客が減ってクビになり、次の働き口がない」「家賃はおろか、スマホの料金も払えない」「財布には200円しかなく、見知らぬ男と夜を過ごすしかない」――。客に暴力をふるわれ、避妊を拒まれる恐れもある。過酷な状況を打ち明けて助けを求める女性に付き添い、行政の窓口や警察に向かう。

 相談に乗った女性は20年度に25人、21年度は約30人に上る。就職が決まったり、生活保護を受けられるようになったりする女性も少なくない。「きちんと働いて暮らすことができれば、好んで売春をする女性はいない」。坂本さんはこう考える。

 今年5月、貧困や性被害などに苦しむ女性を支援する「困難女性支援法」が成立した。女性の補導・更生を主眼とする売春防止法と異なり、新法は「本人の意思を尊重した最適な支援」を掲げて心身の健康の回復や就労、住宅の確保まで幅広く救済を図る。都道府県にも基本計画の策定や民間との連携を求め、24年の施行に向けた支援態勢の構築が急がれている。

 坂本さんは「草の根レベルで女性を支援する民間団体は決して多くない」とし、「政治や行政が民間に『つなぎ役』を任せきりにするのではなく、官民が一体となって貧困の当事者を支えていくことが大切だ」と語る。

 参院選が佳境を迎え、都内各地では舌戦が続く。ただ、世界情勢は緊迫の度を増し、物価高やコロナ禍で痛んだ暮らしや経済の先行きは見えないままだ。首都・東京が抱える課題の処方箋を求め、現場を訪ねた。

■フードバンク 利用者急増

企業などから譲り受けた食料品を並べる「marugohan」のボランティア。コロナ禍以降、利用者は引きも切らないという(6月、台東区浅草橋で)
企業などから譲り受けた食料品を並べる「marugohan」のボランティア。コロナ禍以降、利用者は引きも切らないという(6月、台東区浅草橋で)

 

 米や缶詰にレトルトカレー。台東区浅草橋の「marugohan(まるごはん)」には数々の食料品が並び、まるでスーパーのようだ。運営するのは認定NPO法人「セカンドハーベスト・ジャパン」。企業や家庭から余った食料品の提供を受け、生活困窮者らに配る「フードバンク」の草分け的な存在として知られる。

 1日に訪れるのは約150人で、小さな子どもを抱えた女性から高齢の男性まで様々だ。コロナ禍前は70人前後だったが、感染拡大後は一時300人を超えた。一人親世帯や単身の高齢者に加え、アルバイトや仕送りなどの収入を失った学生や外国人も目立つようになった。

 内閣府が昨年、中学2年生とその保護者に行った調査では、およそ1割が金銭的な理由で必要な食料を買えなかったと回答した。同NPOの芝田雄司さんは、民間や行政による支援の網からこぼれ落ちる貧困層の存在を危惧し、「支援の情報が行き届く仕組みができてほしい」と訴える。

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