テーラーの技後世に紡ぐ 台東の安積さん

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「東京洋服アカデミー」の授業を見守る安積さん(中央)(台東区寿で)
「東京洋服アカデミー」の授業を見守る安積さん(中央)(台東区寿で)

 オーダーメイドスーツを手がけるテーラーの技術を後世に残そうと、台東区で注文紳士服店を創業した安積あさか登利夫とりおさん(86)が養成機関「東京洋服アカデミー」を開校し、後進育成に励んでいる。後継者不足や量販店の台頭で街のテーラーが減る中、「最後の御奉公ごほうこうとして確かな洋裁技術を伝え、テーラーを目指す若者を増やしたい」と意気込む。

 「腕の部分は丸みを持たせて線を引いて」「お尻のところは細かめに縫ってください」。製図用紙やミシンが並ぶ台東区のビルの一室。講師の指導に、生徒たちはコンパスや定規を使って大きな白紙にジャケットの製図をしたり、生地に針を通したりしていた。

 アカデミーは2017年4月開校。授業は週3回で現在は男女3人が通う。その一人で今夏から通う和田俊亮さん(25)は国立大入学後に小さい頃からの夢を諦めきれず、大学を辞めて同アカデミーに入学。「良い服は職人がいてこそできる。やっぱりスーツはかっこいいし、いずれ独立したい」と目を輝かせる。

 安積さんは1933年、福島市生まれ。戦争中は満州(現中国東北部)に行き、両親と死別した。帰国した47年、浅草橋で「小僧募集」の貼り紙を見てテーラーの道へ飛び込んだ。「当時初任給は100円。いつか店を出そうと思って90円は貯金し、14年間ほぼ休みなく住み込みで修業した」

 61年に独立。台東区内に店を構える一方、自分の技術を広めようと近所に住むプロ野球・巨人選手、広岡達朗さんに「気に入らなかったらお代はいらない」と頼み込み、スーツを1着仕立てた。このとき怒り肩だった体形を見て、目立たないよう製作。すると大変喜ばれ、その後巨人の選手たちから次々スーツを求められるように。中でも王貞治さんは特に気に入ったようで、結婚式のウェディングスーツも依頼された。

 

 2010年に店を2代目の武史さん(52)に任せ、第一線を退いた。だが量販店に押されるなどして、街のテーラーの数が減少する現状に、「このままでは業界がダメになる。次世代を担うテーラーを育てたい」と実感。開校へとこぎつけた。

 都洋服商工協同組合によると加盟する都内のテーラーは昭和40、50年代に約3000人いたとされるが、現在は約190人に減少している。アカデミーの総責任者を務める安積さんは「一人ひとり顔が違うように体形も違う。お客様と会話しながら、その人にぴったりな満足いく服を作れる職人を育てたい」。そんな夢を描きながら、日々生徒たちにテーラーの心構えや確かな技術を伝えている。

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899605 0 ニュース 2019/11/15 05:00:00 2019/11/15 05:00:00 2019/11/15 05:00:00 裁断と縫製について教える「東京洋服アカデミー」の授業を見守る安積さん(右から2人目)(10日、台東区寿で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191114-OYTNI50048-T.jpg?type=thumbnail

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