日越演劇言語の共演 あすから世田谷で 「相互理解の契機に」
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日本とベトナムの俳優陣が出演し、別々の言語でセリフを述べる古典演劇「ワーニャ伯父さん」が、22日から三軒茶屋駅(世田谷区)近くの劇場「シアタートラム」で始まる。文化や民族、国籍、所属などを超えた創作活動を行う一般社団法人「壁なき演劇センター」の主催。在留ベトナム人が増えるなか、同センターは「互いを理解するきっかけになれば」と願っている。
「ワーニャ伯父さん」はロシアの劇作家アントン・チェーホフ(1860~1904年)の4大戯曲の一つ。登場人物同士のささいなすれ違いや不信が、やがて発砲事件を起こす悲劇的な作品だ。今回演じる俳優14人のうち、ベトナム人は10人、日本人は4人。ベトナム人の俳優陣は、ベトナム有数の劇場「国立ベトナム青年劇場」のメンバーで、映画や連続ドラマにも出演する著名な俳優が多い。
舞台では、日本人俳優は日本語を、ベトナム人俳優はベトナム語をそのまましゃべり、字幕が映し出される演出がなされる。演出・構成を手がける同センター代表理事の杉山剛志さん(45)は「内容は現代的。今の問題と通じるところがたくさんある」と魅力を話す。杉山さんは、2017年からベトナムで同作品の演出を手がけ、10月に開催されたベトナム国際演劇祭で、最優秀作品賞や主演俳優・女優賞などを獲得した。
ベトナムの俳優陣らは12日に来日。翌13日から日本の俳優陣らと稽古を行っている。ワーニャ役のグエン・ドゥック・クエさん(51)は「相違点や困難があっても、乗り越えてハーモニーを作り出すことができている」と自信をのぞかせる。ワーニャのめい・ソーニャを演じる中村あさきさん(28)は「言葉が分からなくても役者同士で感じ合えれば、違和感がない。芝居好きの方でも初めて見る方でも楽しめるはず」と語る。
出入国在留管理庁によると、在留ベトナム人は約37万人(6月末時点)で、ここ数年急増している。杉山さんは「日本のあちこちで『言葉の壁』を感じる場面が増えているはず。劇場で字幕が気にならなくなる感覚を味わってほしい」と来場を呼びかけている。
公演は22日(午後7時開演)、23日(午後1時、同6時半開演)、24日(午後1時開演)の3日間で、約2時間20分。料金は一般3000円(当日3500円)などで、外国籍1500円。問い合わせは世田谷パブリックシアター(03・5432・1515)。