医療広がる民間協力 PCR受託■看護師派遣
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新型コロナウイルスの影響が長引く中、負担が重くのしかかる医療現場を、外部から支える取り組みが広がっている。院内感染を防ぐため、都の協力企業として医療従事者のPCR検査を実施したり、クラスター(感染集団)が発生した施設に看護師を派遣して人手不足を補ったりしている。(増田知基)
細菌検査などを行う「早川予防衛生研究所」(新宿区)は昨年12月から、都内の病院や福祉施設の関係者のPCR検査を実施している。
都は同10月、検査の需要のピークを1日最大6万5000件とし、そのための体制を整備すると発表。1954年創業の同社は主に性感染症の検査を行っていたが、「感染拡大防止に貢献したい」と都の協力企業となった。
都の補助金を使って導入した最新装置は、「パンサーシステム」と呼ばれる。全自動で遺伝子の解析ができる高性能のマシンで、導入した2台をフル稼働させれば1日1000件の検査が可能だ。
検体は新宿だけでなく、豊島、中野、世田谷、杉並の各区や三鷹市といった近隣の医療機関などから同社が回収。検査数は感染者の増加に伴って増えており、現在は1日約50件を社員の臨床検査技師8人が調べている。
田島久雄検査部長(62)は「第3波が広がって、一部の業者に負担が集中している。その軽減のためにも、機器をさらに1台追加して検査能力を上げたい」と話す。
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医療支援に取り組むNPO法人「ジャパンハート」(台東区)は、クラスターが発生した病院や立地自治体の要請を受け、所属する看護師や医師を派遣する取り組みを続けている。東日本大震災や熊本地震といった大規模災害の現場でも活動した実績がある。
広報の高橋茉莉子さん(32)は「初動を早くし、混乱して人手も足りない医療現場を助けるという点では、災害もクラスターと同じ」と語る。
東南アジアなどでの国際医療支援も行ってきたが、新型コロナの影響で昨春から渡航が難しくなり、この時期から、新型コロナでの派遣を始めた。1月21日現在、10都道府県24か所の病院や福祉施設などで延べ109人が活動した。
昨年5月以降、クラスターが発生した武蔵野中央病院(小金井市)も支援を受けた病院の一つだ。院内感染によって、契約していた人材派遣会社の人材が出勤を見合わせるなど深刻な人手不足に陥っていたが、ジャパンハートの看護師らは、主に感染者が出ていない病棟での消毒作業や患者の排せつ介助を担当。同病院幹部は「国際的に活躍しているだけにフットワークが軽く、過酷な状況が救われた」と感謝する。
高橋さんは「今後も迅速に現場に駆けつけ、施設側のニーズをくみ取るよう努めたい」と話している。