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移動困難者の需要応える…新宿の民間会社
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各地の無料のPCR検査会場に希望者が殺到する中、新宿区の民間検査会社「J―VPD東京ラボラトリー」が、大型バスを使った移動式のPCR検査を始めた。都の無料検査事業の一環で予約不要。会場が自宅から遠くて、検査を受けられずにいた高齢者や子供の検査需要に応える狙いがある。(中村俊平)
都は、クリニックやドラッグストアなど約270か所で無料PCR検査を実施しているが、感染の急拡大で検査キットの品切れが相次ぎ、予約が取りにくくなっている。そこで同社はマンションが密集し、近くに検査会場が少ない港区台場地区で急きょ、バスによる臨時の検査会場を設けることにした。
22、24日の午前11時~午後4時、台場区民センター前にバスを横付けし、臨時検査会場とした。希望者は車内の座席に座り、検体の唾液を自ら採取して看護師に手渡していた。陽性かどうかは翌日、同社から連絡があるという。行列ができるほど希望者が集まり、2日間で約300人が検査を受けた。
24日に検査を受けた近くのパート女性(76)は、検査を受けるには電車で新橋か品川まで出掛ける必要があったといい、「高齢だし、市中感染が広がる中で移動するのは不安だった。ようやく検査を受けられて良かった」とほっとした表情を浮かべた。中央区の男性会社員(23)は出張に備えて5か所以上の検査会場に電話をかけたが、いずれも数日先まで予約が埋まっていたといい、「もう少し検査体制を充実してほしい」と疲れた様子で話した。
次回は27日午前10時~午後4時、北区豊島の豊島5丁目団地で移動式検査会場を開く。同社の山田哲児社長(53)は「必要とされる場所に我々の方から出向いて、多くの人たちに検査機会を提供したい」と話している。
移動式検査は、100人以上の検査人数の確保を条件に受け付けている。問い合わせは同社(03・6274・8198)へ。
隔離生活後やっと検査
臨時検査会場では、検査を受けたくても受けられない「検査難民」の姿も見られた。
2歳の長男を連れて検査の列に並んでいた看護師の女性(40)の場合、夫(35)が今月13日、39度近い発熱と倦怠感を訴えたため、近くの医療機関に夫の検査を申し込んだが、「対応は難しい」と断られた。別の病院で受診の予約が取れたのは2日後。その日のうちに夫は陽性と判定され、女性と長男も保健所から濃厚接触者と認定された。
夫は自宅療養となり、女性と長男はリビングに布団を敷き、寝室の夫と隔離生活を続けた。部屋の消毒は徹底したが、トイレや風呂は共用で感染の恐怖はぬぐえなかったという。検査を受けようにも都内の会場は予約が埋まっており、幼い長男を連れて外出するのもはばかられた。偶然自宅近くに検査会場が設けられると知って訪れたといい、検査後、「息子も自分もいつ発症するのか不安だったが、少しだけ心が落ち着いた」と語った。