東京・銀座の「数寄屋橋」名前の由来は? 

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かつて外堀に架かっていた数寄屋橋(東京高速道路提供)
かつて外堀に架かっていた数寄屋橋(東京高速道路提供)
新板江戸大絵図(遠近道印、1670年刊)の一部分。外堀に架かる橋の下側に「すきやはし」、橋の左側に「すきや丁」の文字が読みとれる(右が北、国立国会図書館デジタルコレクションより)
新板江戸大絵図(遠近道印、1670年刊)の一部分。外堀に架かる橋の下側に「すきやはし」、橋の左側に「すきや丁」の文字が読みとれる(右が北、国立国会図書館デジタルコレクションより)

 国内屈指の繁華街・銀座のど真ん中にあり、日々多くの人たちが行き交う数寄屋橋交差点。その名が示すとおり、この地にはかつて、外堀にかかる石造りの橋があったのだが、「数寄屋」とは「茶室」を意味する。なぜ橋にそんな風流な名前が付けられたのだろう。(長嶋徳哉)

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■お茶文化と密接に関係

 織田信長や豊臣秀吉、徳川家康が活躍した安土桃山時代、武家や貴族の間で茶の湯が流行した。書院造りに茶室を備えるようになり、そうした茶室風の建築物を「数寄屋造り」と呼ぶようになった。数寄屋橋の名は、この「数寄屋造り」に由来するとの言い伝えが広く知られている。

 江戸時代初期、信長の弟で茶人の織田有楽斎の屋敷があり、数寄屋造りの茶室が有名だったことから、地名や橋の名前となった――というものだ。しかし、地元・中央区の歴史に詳しい区立郷土天文館学芸員の金子千秋さん(39)=写真=は「この地に有楽斎の屋敷があったことを裏付ける古地図はありません」と明かす。

 数寄屋橋は1629年(寛永6年)、伊達政宗が幕命を受けて江戸城の外堀に架けた。その後刊行された「武州豊嶋郡江戸庄図」や「新板江戸大絵図」では、外堀に架かる「すきやはし」のほか、橋のそばの町人地の一角に「すきや丁」の記載がみてとれる。どの資料も伊達家や松平家の屋敷が描かれているが、有楽斎に関連するような屋敷は見当たらない。

 ただ、金子さんは「有楽斎は主に大坂(現在の大阪)や京都にいたので、屋敷が地図に記載されなかった可能性もある。言い伝えが事実なのか、後世の人が有楽斎と結びつけたのかは不明です」と話す。

■「茶室」「茶道役人」など諸説

 一方、「『数寄屋坊主』から由来するかもしれない」と語るのは、鳥取県立博物館の学芸員、大嶋陽一さん(40)だ。数寄屋坊主とは、江戸城内で将軍や大名をお茶で接待する役人で、幕府がまとめた江戸の地誌「御府内備考」には、数寄屋橋近くに数寄屋坊主の屋敷があった、との記述がある。

 大嶋さんによると、下谷(現在の上野)付近で火事があった際、焼けた寺の跡地に数寄屋坊主が屋敷を拝領したところ、後に「下谷数寄屋町」と改名されたとの記録もあるという。大嶋さんは「数寄屋坊主の屋敷が近くにあったから、数寄屋橋と名付けられた可能性はある」と考える。

 「江戸惣鹿子名所大全」(1690年)に、数寄屋橋付近で茶道具屋があったとの記述があるほか、「江戸買物独案内」(1824年)では、茶問屋や茶道具の店、菓子屋が紹介されている。大嶋さんは「数寄屋橋の周辺で大勢の人たちがお茶を楽しむ様子が目に浮かぶ。茶文化が『数寄屋橋タウン』を盛り上げていたかもしれない」と想像を膨らませる。

 数寄屋橋の名称の由来は諸説ある。しかし、お茶と密接に関係しているのは間違いなさそうだ。

 数寄屋橋はその後、何度も修復と架け替えを重ねながら、300年以上にわたって人々の往来を支えてきた。しかし戦後復興と渋滞緩和のため、高架の高速道路が建設されるにあたり、1958年、外堀の埋め立てとともに数寄屋橋は壊された。その痕跡は、交差点や交番、公園などの名称に残るのみだが、銀座を象徴する地名として誰もが知る存在となっている。

 コロナ禍では、デパートや飲食店が休業に追い込まれ、数寄屋橋交差点も一時期、人の姿が消えた。そんな折、銀座の各店舗は、自慢の逸品を物々交換する様子をSNSで公開し銀座の魅力を発信するなど、難局を乗り越えようと結束を強めた。「東京数寄屋橋ライオンズクラブ」理事で、銀座で長年にわたり不動産業を営む村木秀之さん(67)=写真=はこう力を込める。「銀座の底力は健在。踏ん張って次の時代を生き抜きたい」

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2716867 0 ニュース 2022/01/31 05:00:00 2022/01/31 16:39:46 2022/01/31 16:39:46 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220130-OYTNI50030-T.jpg?type=thumbnail

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