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新型コロナウイルスに感染した都内の自宅療養者は今月に入って初めて8万人を超え、その後も横ばいで推移する。感染急拡大を受け、都は1月末から重症化リスクの低い感染者は健康観察を自身で行う仕組みに切り替えた。自宅療養の体験者や医師、防災の専門家から自宅療養における注意点や準備のポイントを聞いた。(長嶋徳哉、白井亨佳)
■つながらぬ電話 北区の舞台俳優、宮崎恵治さん(58)は1月23日の舞台稽古中、のどに痛みを感じてPCR検査を受けたところ、変異株「オミクロン株」に感染していることが判明。自宅療養に入った。
2人暮らしの母親(87)への感染を恐れ、自宅の居住スペースを1階と2階で分けた。宮崎さんは主に2階で過ごし、1階のトイレは使うたびに消毒。風呂には入らないようにした。
母親への感染が心配で外出させていいのか保健所に相談したかったが、電話がつながらず、PCR検査を受けさせることができなかった。防災用にカップ麺やレトルトのおかゆを備蓄していたが、5日間で底をつき、やむなく母親に買い出しを頼んだ。自分の症状が急変しないか、母親にうつさないか不安な日々を過ごした。
発熱と頭痛は3日で収まったが、鼻水やたんは長引き、自宅療養は今月6日まで続いた。宮崎さんは「日頃から備えをしておく大切さを痛感した」と話した。
■この症状要警戒 都内の自宅療養者のうち、症状や基礎疾患の病状が重い感染者や妊婦は原則として保健所が健康観察を担う。一方、50歳未満で基礎疾患のない無症状・軽症の人は自ら健康観察を行い、体調に変化があった時は、「自宅療養サポートセンター(通称・うちさぽ東京)」に自ら電話などで連絡する。50歳以上や重症化リスクがある人には、「都フォローアップセンター」が電話などで健康観察を行う。両センターとも希望すれば、約1週間分の食料の配送や、血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターの貸し出しをしてもらえる。
自宅療養中は、どんな症状に注意すればいいのか。自宅療養者を往診する桜新町アーバンクリニック(世田谷区)の遠矢純一郎院長は「過度に恐れる必要はないが、解熱剤などによるセルフケアが大切」と話す。ただ、眠れないほどのひどいせきや息苦しさが表れたら、「肺炎に移行して重症化しやすいサイン」として注意が必要だという。
また自覚症状がない場合もあるため、都や自治体から配布されたパルスオキシメーターの数値が95%以下になったらセンターに連絡すべきだという。家庭内感染を防ぐには自宅療養者と居住スペースを分けなければならないが、高齢者は自ら症状を訴えられないまま急変することもあるため、1日に2、3回は声をかけて確認する必要があるという。
■ダンボール数箱 自宅療養となれば、10日間ほどは外出できなくなる。都や自治体に頼めば食料品や日用品を届けてくれるが、配送が遅れることがあるので、しっかり備蓄したい。防災アドバイザーの高荷智也さん(39)は、段ボール箱を数箱用意し、賞味期限ごとに小分けにする方法を勧める。
水は1人1日あたり1・5リットルほど必要。箱には水のほか、賞味期限が1年以上のレトルト食品やインスタント食品など食べ慣れた食品を入れる。賞味期限が近くなったら食べ、減った分を補充すれば管理しやすいという。常備薬のほか、体調を整えるには、スポーツ飲料の粉、長期保存できるサプリメントも役立つ。高荷さんは「いざという時は突然やってくる。安心できるように、時間や分量に余裕を持って準備してほしい」と話す。