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台東区にある「杜の都なつみクリニック」は、ぬいぐるみの修理を手掛ける「専門病院」だ。
持ち込まれるのは、長年使われて穴が空いたり、毛が抜けてしまったりしたぬいぐるみ。白衣を着た「医師」が、傷んだ布の交換や植毛などをほどこし、きれいによみがえらせる。

「ただ新品のように修理するのではなく、もとの表情や雰囲気を残すことを心がけている」と院長の箱崎菜摘美さん(36)は話す。
仙台市出身の箱崎さんは洋裁の専門学校を卒業後、衣服やバッグなどの修理をする会社に就職。仕事でぬいぐるみを修理した際に、退院した家族を迎えるように喜ぶ依頼者の姿に心を動かされた。「ぬいぐるみ専門の病院をつくれないか」。東日本大震災を経験する中で「後悔のないようやりたいことに挑戦しよう」との思いを強くし、2016年に地元・仙台市で開業した。


腕が評判を呼び、次第に県外や海外からも依頼者が訪れるようになった。アクセスの良い場所を探し19年には台東区に移転。学生時代の友人らも集まり現在は6人体制で「治療」にあたる。
値段は傷みの少ないもので1万~2万円、大きなものになると数万円することもあるが、予約は半年待ちで依頼者は絶えない。月に約100体を修理し、これまで修理したぬいぐるみの数は1万3000体を超えた。

病院の入り口には治療を終えたたくさんのぬいぐるみが並ぶ。ぬいぐるみたちは家族の迎えを待ちかねているように見えた。
(写真と文 富永健太郎)