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「赤米文化広げたい」
国分寺市で発見された古代米の一種「武蔵国分寺種赤米」の普及に取り組む市民らの団体が、赤米を原料に使ったクラフトビールを、隣町の国立市の醸造所と共同開発した。まろやかな口当たりとさわやかな香りが特徴の一杯。地域の農業の歴史を伝える新たな味として、今後も醸造を続けていく。(柳沼晃太朗)
完成したクラフトビールは「あけに恋して」。あけは、「朱」の読み方の一つ、そして梅雨が明け、実りの秋に向けて育つ稲の姿に着想を得て名付けた。国分寺市本町の飲食店「胡桃堂喫茶店」や、JR国立駅近くの酒店「せきや」で提供している。提供は在庫がなくなり次第終了となる。
赤米は縄文時代に外国から日本に伝わり、江戸時代までは食卓に並んでいた。栄養豊富な一方で、白米よりもうま味が劣り、稲も倒れやすくて栽培に手間がかかるため、明治時代以降はほぼ姿を消した。国分寺市では、1997年に畑で赤米の種もみが見つかり、一部の農家が保存を目指して栽培に取り組んできた。
2018年には、赤米の普及を進めようと、市民らが中心となって「国分寺赤米プロジェクト」を始動した。畑や水田で農薬や肥料を使わない「自然農」として赤米を栽培。白米と一緒に炊いて赤飯のように仕上げる「赤米ごはん」を市内の飲食店で提供したり、菓子店と共同であられや焼き菓子の製造をしたりして名物の開発を行ってきた。
今回のクラフトビール造りも、その一環だ。当初は日本酒を検討したが、原料のコメの規格が厳しいことや、国立市の醸造所「クニタチブルワリー」が開発に協力してくれたこともあり、ビール造りに方針転換した。
醸造でこだわったのは赤米の配分量。ビールは麦芽やホップに加え、副原料としてコメも使われる。醸造所で昨年造った別のビールは、麦芽約9割に対し、コメの割合は約1割だったが、今回の「あけに恋して」は、赤米の配分をその3倍以上の割合にした。そうしたことで、麦の風味をほどよく残しつつ、コメのまろやかさとさわやかな香りを感じられる、絶妙なバランスに仕上がった。
醸造長の
赤米プロジェクトが手がける畑や水田は、国分寺市内などに3か所計約2500平方メートル。倒れやすい稲を麻ひもで固定するなど作業の手間もかかり、昨年の収穫量は種もみで約340キロ・グラムと決して多くない。それでも、プロジェクトリーダーの坂本浩史朗さん(35)は「大量生産はできないが、ビールを含め様々な製品を多くの人に楽しんでもらい、赤米文化を広げたい」と意気込んでいる。