<下>心技体整え夢舞台へ

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 米子市勝田町にある県立米子東高の野球部グラウンド。練習中は、鉄パイプを平均台や鉄棒に似た形に組んだ大小様々な器具が置かれ、部員たちがその上を綱渡りをするように中腰で歩いたり、ひらりと乗り越えてからノックの球を捕ったりする。サーカス団の訓練にも見える奇妙な光景だが、表情は真剣そのものだ。

 こうしたトレーニングは、2018年11月末頃から練習メニューに取り入れた。直前の秋季中国地区大会で、優勝した甲子園常連校の広陵(広島)や、準決勝で対戦した呉(広島)の野手が見せた軽やかな身のこなしに、強い危機感を持ったのがきっかけだった。

 「(打球に対して)一歩目の動き出しが遅い」。そう痛感した監督の紙本庸由が着目したのが、路上の障害物を軽やかにかわして進むフランス発祥のスポーツ「パルクール」だった。重心を低く保ち、さらに体の柔軟性や、敏しょう性、バランス感覚を高める狙いがある。

 その効果は間もなく形となって表れた。今月2日に南部町内の球場で行った紅白戦。三塁手の諸遊壮一郎が、三塁線強襲の打球を逆シングルで捕球後、力強い送球で仕留めた。その軽快な動きに紙本も思わず目を見開いた。

 二遊間と違い、鋭い当たりが飛んでくることの多い三塁は「ホットコーナー」と呼ばれる。打球への素早い反応が求められるが、諸遊は「中国大会では速い打球に全然対応できなかったが、処理できるようになった」と手応えを口にした。

 外野を守ることもあるエースの森下祐樹は「力の抜き方が分かり、打者が打つ瞬間に固まらなくなった」と実感する。

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 米子東は、プレーの練習やトレーニングと共に「食事」も重視する。それを陰で支えるのが、2人のマネジャーだ。

 部室近くにある一室。炊きたての米の香りが漂う中、山崎みなと小村ののかが丁寧に三角形のおにぎりを作ると、練習を終えた部員たちは、たんぱく質を多く含む卵や納豆などとともに胃袋へ放り込んでいった。

 2人は1日に15合の米を炊き、各部員の体脂肪率などに合わせて重さを量りながら、平均300グラムほどに調整する。毎日続けることで、部員の筋力アップとスタミナ強化につながっている。

 体作りに対する部員の意識も高い。身長1メートル88と体格に恵まれた大型遊撃手の1年生、岡本大翔は自らも栄養学を勉強し、日々の食事で人一倍、メニューに気を配る。「入部時は、ただ量を食べればいいと考えていたが、栄養をバランス良く、しっかり吸収することが重要と気づいた」。この10か月余りで体重は78キロから86キロに増え、今月9日に行われた作陽(岡山)との対外試合では、左翼席へ豪快なアーチをかけた。

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 全ての行動は甲子園に通ずる――。そう信じて続けてきた一つひとつの努力が実り、花開き始めた。心技体ともに、今もなお成長を続ける米子東ナインは、もうすぐ夢舞台へと挑む。

(敬称略。この連載は、浜畑知之が担当しました)

◎題字は紙本庸由監督

489488 1 文武不岐 聖地に挑む米子東 2019/03/15 05:00:00 2019/03/15 05:00:00 2019/03/15 05:00:00

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