海に湯湧き 開発100年

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「海に湯が湧く」で知られる皆生温泉=同温泉旅館組合提供
「海に湯が湧く」で知られる皆生温泉=同温泉旅館組合提供
「襟裳岬」を歌う柴野社長
「襟裳岬」を歌う柴野社長

温泉

皆生温泉

 秋が日に日に深まり、湯煙が恋しくなってきた。鳥取県は東部から西部にかけて温泉地が点在する〈温泉天国〉。因伯路に湧く温泉を巡り、歴史と今と未来を見つめた。(但見易史、安恒勇気)

■沖合に泡噴き出る場

 「襟裳岬!」。3日夜、米子市の皆生温泉の旅館「皆生菊乃家」のロビーで、宿泊客からリクエストの声が上がると、柴野憲史社長(69)がギターを弾きながら歌手の森進一さんの顔まねをして、こぶしをきかせた。

 今年が開発100周年の皆生温泉。新型コロナウイルスの感染拡大で宿泊客が急減し、一時は臨時休業する施設が相次いだが、政府の観光支援策「Go To トラベル」などで客足が戻ってきた。皆生菊乃家も週末はほぼ満室という。18年前からライブで皆生温泉を盛り上げてきた柴野社長は「ようやく明るさが見えてきた」と笑顔を見せた。

 市史などによると、歴史は明治初年頃にさかのぼる。皆生海岸の浜辺から約200メートル沖合に泡が噴き出ている場所があったが、利用はされていなかった。

 当時は日野川から大量の土砂が海に流れ出し、次第に砂浜が沖へ延びていった。泡が噴き出る場所が波打ち際になっていたとみられる1900年(明治33年)、山川忠五郎ら漁師が浅瀬で湧出している温泉を発見した。孫の妻の栄子さん(93)は「砂浜を掘り、むしろで囲って地元の人にも入ってもらっていたと聞いた」と振り返る。

■有本松太郎が経営

 公衆浴場や旅館が開業したが、海が荒れるたびに泉源が被害を受け、経営が行き詰まった。そこに登場するのが「温泉開発の父」有本松太郎だ。

 皆生温泉開湯100年祭記念誌などには、有本は兵庫県浜坂町(現・新温泉町)出身で鉄道建設工事で財をなし、山陰線の工事が縁で明治末期に米子に居を構えたと記されている。有本は20年に温泉開発の構想を発表し、泉源を安全な場所に求める調査を行った。今年の「開発100周年」はこの歴史に由来する。

 有本は、21年に「皆生温泉土地」(現・皆生温泉観光)を設立して本格的な温泉経営を始めた。米子電気軌道も設立し、25年に路面電車で街中心部の角盤町と皆生を結んだ。この頃には旅館が16軒を数えたという。電車は翌年に米子駅まで延伸され、38年の廃止まで多くの温泉客を運んだ。

■30年後の展望描く

 海に湯が湧く米子の皆生 波の音さえ寝てて聞く

 36年に滞在した詩人の野口雨情うじょうが作った「皆生小唄」だ。元の歌詞にあった「伯耆の」が戦後、「米子の」に改められてレコード化され、皆生の名が全国に知れ渡った。「海に湯が湧く」は今も変わらぬキャッチフレーズだ。

 宿泊施設の経営者らでつくる「皆生温泉まちづくり会議」が2019年に作成した新たなビジョンも「海」を前面に出す。「海遊かいゆうリゾート・皆生温泉」をテーマに掲げ、「健康」「長寿」「スポーツ」をキーワードに、30年後も選ばれるためのまちづくりを進める構想だ。

 「皆生と言えばやはり目の前に広がる海。ビジョンを具体化させ、観光客だけでなく地元の人にも愛される温泉にしたい」。会議の座長で皆生グランドホテルの伊坂明社長(49)は力を込める。

 「Newニューもん@鳥取」10月シリーズは、「温泉」をテーマに連載します。

 <皆生温泉> 美保湾に面した弓ヶ浜半島の東端に位置する。同温泉旅館組合には16の宿泊施設が加盟し、近年は年間40万人前後が宿泊している。泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉で「塩の湯」と呼ばれ、保湿効果に優れた美肌の湯として知られる。

名湯 県内ずらり

 県内には、主要な温泉地が10か所あり、開湯以来1000年以上たつとされる岩井温泉や、明治時代に発見された鳥取温泉など歴史も様々だ。

 泉質も多種多様。国内外から注目されているのがラジウム泉で、関金温泉(倉吉市)は、三朝温泉(三朝町)と並んで世界有数のラジウム含有量を誇る。奈良時代の高僧・行基が発見し、空海が再興したとされる関金温泉は、湯の美しさから「白銀の湯」とも呼ばれ、2011年には温泉療法医がすすめる名湯百選に認定されている。

 近年は旅館やホテルの廃業・閉鎖が相次いでいたが、今年6月にはこれまでの旅館組合に代わる「関金温泉振興組合」が発足。ウォーキングイベントや健康食と温泉入浴などを組み合わせたモニターツアーを実施しており、「スポーツや健康をテーマに関金温泉をPRしていきたい」と意気込んでいる。

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1545345 0 New門@鳥取 2020/10/14 05:00:00 2020/10/14 05:00:00 2020/10/14 05:00:00 「海に湯が湧く」で知られる皆生温泉(同温泉旅館組合提供) https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201013-OYTAI50021-T.jpg?type=thumbnail

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