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<鳥取の山>伯耆富士 悠久の歴史

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木道が整備され、回復した緑が鮮やかな山頂の避難小屋周辺(6日、大山で)
木道が整備され、回復した緑が鮮やかな山頂の避難小屋周辺(6日、大山で)
裸地化した山頂付近(1985年11月撮影)=河野利晴さん提供
裸地化した山頂付近(1985年11月撮影)=河野利晴さん提供
カシナガトラップ=県提供
カシナガトラップ=県提供

大山〈1〉

 夏山シーズンを迎えた中国地方の最高峰・大山(1729メートル)。「伯耆富士」とも呼ばれ、古くから人々に親しまれているが、登山客によって草木が踏みつけられ、山頂付近が裸地化してしまった時期もあった。どのように緑を取り戻したのか。その歴史を成り立ちからたどってみた。(川本一喬)

100万年前に溶岩流

 大山は、火山活動の溶岩によってつくられた山岳部と、火砕流や火山灰などが積もった東西約35キロ、南北約30キロにも及ぶ広大な裾野から成る。火山活動を始めたのは、約100万年前。初期は現在の山腹や裾野の縁から溶岩流が噴出し、これが 鍔抜山つばぬきやま や下蒜山などをつくったとみられる。

 活動の最盛期は約60万~40万年前。火山全域に及ぶ膨大な量の火砕岩を噴出し、今の大山の原型ができた。約2万年前に、現在の 弥山みせん三鈷峰さんこほう烏ヶ山からすがせん の三つの溶岩ドームを形成して活動を終えたとされる。

 県立大山自然歴史館のマネジャー・富田健吉さんによると、大山は現在、解体期にあるという。風化や浸食が進み、年間で7万立方メートル(推定)が崩落しており、富田さんは「これからは崩壊を食い止める努力が必要だ」と指摘する。

復元へ「一木一石」

 大山が初めて歴史に登場したのは、奈良時代の733年に 編纂へんさん された「出雲国風土記」。この頃から牛や馬の放牧地だったとされる。江戸時代には多くの牛馬が取引され、現在の岡山県や滋賀県に搬出されるなど、「日本三大牛馬市」の一つに数えられた。牛馬市は大山の伝統として、1936年に全国で3番目の国立公園に指定されるまで続いた。

 国立公園となったことで、知名度が向上。高度成長期には観光ブームが訪れ、多くの登山客でにぎわうようになった。

 一方で、ごみが捨てられるようになり、山頂部の植物は多くの登山客に踏まれて絶えた。75年頃には裸地化していたといい、雨や融雪水などで土壌の浸食も進み、頂上歩道の崩壊もあった。

 そこで、85年に官民で結成したのが「大山の頂上を保護する会」。小石や苗木を登山客にも登山口付近から山頂まで運んでもらう「一木一石運動」を提唱した。運動は今も続いており、小石は頂上避難小屋のそばに集められ、土の流出防止に使われる。苗木は外来種や踏みつけによって駆逐されたダイセンキャラボクなどの固有種で、本来の植生の復元を図っている。

 90年には、県が頂上を周回する木道を整備。踏みつけを防ぐことで、青々とした植生が観察できるまでになった。自然公園財団鳥取支部大山事業地の三原勝弘さんは「会の結成から30年以上がたち、多くの植物が戻ってきた。これからも運動を継続していきたい」と力を込める。

ナラ枯れ対策急務

 しかし、近年、新たな問題が浮上してきた。コナラやミズナラが、体長5ミリ前後の甲虫「カシノナガキクイムシ」が幹の中に持ち込む病原菌によって発生する「ナラ枯れ」だ。

 県森林づくり推進課によると、5年ほど前から被害が本格化。2020年度には9717本が枯れた。景観を損なうだけでなく、道路に枯れた木が倒れる恐れもあり、県は、国や周辺自治体などと連携して対策に乗り出している。

 被害の拡大を抑えるため、健全な木に穴を開けてカシノナガキクイムシをおびき寄せ、漏斗を重ねた仕掛けの中に入り込んだところを捕らえる「カシナガトラップ」を展開。昨年からは被害に遭いやすい幹が太く育った木を伐採してナラ林の若返りを図っている。

 今年は、今後の解決策を見いだすため、被害箇所の生態系の調査を行う予定。同課は「伐採はまだわずかな範囲でしかできていない。今年は伐採面積を倍増するなどして、ナラ枯れに対処していきたい」としている。

 「 Newニューもん @鳥取」6月シリーズは「鳥取の山」をテーマに連載します。

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2137017 0 New門@鳥取 2021/06/19 05:00:00 2021/06/19 05:00:00 2021/06/19 05:00:00 一度は裸地化した大山山頂の避難小屋周辺。木道が整備され、植生も復元されている https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210618-OYTAI50013-T.jpg?type=thumbnail

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