忘我の境地 土に学ぶ
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元八頭高校長・大原さん
退職後 自宅に工房構え作陶
県立八頭高の元校長が退職後、陶芸の世界に魅了され、鳥取市内の自宅に工房を構えて作品を生み出している。コーヒーカップや茶わん、皿など日常品が多く、鳥取大丸で販売しており、味のある陶器を安く買えると人気になっている。「私は大した人間ではないが、生徒には一生懸命に取り組む大人の姿を見せようとは考えていた」。今は陶芸と真剣に向き合っている。(脇孝之)
元校長は鳥取市浜坂6、大原洋二さん(68)。県立鳥取商、鳥取東などで数学を教え、八頭の校長を最後に8年前に退職した。再び教壇に立つ道もあったが、退職前から習っていた陶芸に「土に向かい、忘我の境地を味わえる」とのめり込んだ。
鳥取市国府町にある因幡国府焼の窯元に通い、退職の半年後には自宅の庭に電気窯、ろくろなどを備えた9平方メートルの工房を建てた。その後も兵庫県丹波篠山市の兵庫陶芸美術館など数か所の教室で学び、技術と知識の向上に努めた。
滋賀県甲賀市信楽町などの土を用い、ろくろで成形していく。透明な
倉吉市や鳥取市のフリーマーケットで売ったほか、2013年から地元の喫茶店「カフェ フーリッシュ ハート」で販売を始めた。昨年からは鳥取大丸5階のコーナー「山陰三ッ星マーケット」にも置き、月に100個近く売れている。どの作品も大原さんの美的感覚と人柄が反映され、一見素朴ながら上品さと伸びやかさが感じられる。値段も800~1000円程度と手頃だ。
教員時代は、たとえ嫌われても子どもを鍛えることを第一にしてきた。子どもは瞬間的に成長するので「この子はできる」「あの子はできない」と決めつけないように心がけてきた。学校を離れた今、そうした考えやこれまでやっていたことの全てが作風に影響していると感じているという。
「打ち込めるものがあるし、世間とのつながりも持てる。今は充実している」。作品づくりに追われないよう、作陶は1日2~3時間にとどめ、読書や運動にも精を出す日々を送っている。