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新酒鑑評会 中止か継続か

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県新酒鑑評会で審査される酒(鳥取市で)
県新酒鑑評会で審査される酒(鳥取市で)

県酒造組合 意見分かれる

方向性違う ■ PRの場

 日本酒のできばえを競う毎年春の「県新酒鑑評会」が、岐路に立たされている。鑑評会で好まれる味わいとは異なる酒造りに力を入れる酒造会社が増え、出品数が激減したためだ。主催する県酒造組合は「経費削減のため中止」と考える組合員と、「貴重なPRの場」として続けるように求める組合員とで意見が分かれている。(門前光)

 3月下旬、鳥取市の県産業技術センターで県新酒鑑評会が開かれた。白衣に身を包んだセンターの職員ら数人が、いくつも並んだグラスの前に立ち、注がれた酒をスポイトでプラスチック容器に移して鼻を近づける。続いて口に含んで紙コップにはき出した。顔色は変えずに、すぐさま香りや味の評価を手元の用紙に記入していった。

 全国新酒鑑評会の「前哨戦」の意味を込めて毎年開催してきた。しかし出品数は廃業などを理由に年々減少。香りが強く鑑評会で好まれやすい「吟醸酒」ではなく、「純米酒」造りに励む蔵元が増えたことなどに伴い、2002年に18蔵あった参加数は14年、8蔵にまで落ち込んだ。

 減少を食い止めるために組合は15年から、これまでの鑑評会を「吟醸酒の部」にするとともに、新たに「純米酒の部」を設けたが、盛り返したのはわずか一時。今年3月の鑑評会は7蔵しか出品しなかった。組合には現在16蔵が加盟しており、参加は半数以下にとどまる。

 吟醸酒の部には三つの賞があるが、ここ10年ほど受賞蔵の顔ぶれはほぼ同じだ。新鮮さがなく、組合会長で諏訪酒造(智頭町)最高執行責任者の東田とうだ雅彦さん(61)は、鑑評会の中止を視野に入れ始めた。

 背景には組合の懐事情もある。昨年、経費削減のため組合事務所を引き払い、常勤の事務員をなくした。ホームページも閉鎖した。一方で鑑評会は会場代やスタッフの人件費など20万円以上がかかるという。東田会長は「参加する蔵の数が底をつきかけているのに、続ける意味はあるのだろうか」と悩みを打ち明ける。

 蔵ごとに仕込みの時期が異なるため、鑑評会に間に合わない蔵もあるという課題も残る。

 方向性の違いから出品を取りやめた蔵もある。山根酒造場(鳥取市青谷町)は10年ほど前が最後になった。社長の山根正紀さん(56)は審査員に強く印象づけられるような、香りを際立たせた酒ではなく、米のうま味を追求した酒造りに挑んでおり「出品しても高評価はもらえないだろう」と受け止める。

 鑑評会は試飲で口に含んだ酒をはき出して評価する。そのため「飲み込んで楽しむ消費者とは評価する点が違う」とも感じている。

 一方、鑑評会を励みにしてきた酒造会社もある。元帥酒造(倉吉市東仲町)は全国の鑑評会で最高賞の金賞に輝いたこともある。代表で組合前会長の倉都祥行さん(72)は「経費の見直しは必要だ」としながらも「客観的な視点で酒を見つめ直し、外部にPRできる数少ない機会だ」と力強く開催の意義を語る。

入賞しやすい「方程式」も

 「吟醸酒」は原料や精米歩合などの条件によって分けられたうちの一種で、米を4割以上削り、醸造アルコールを添加して醸したものを指す。低温でゆっくりと発酵させることで華やかな香りを生み出す「吟醸造り」をするのが特徴だ。

 業界では、鑑評会で入賞しやすいのは▽原料の米が山田錦▽吟醸酒のうち5割以上削った大吟醸――といった「方程式」があるといわれる。

 一方、「純米酒」は醸造アルコールを添加せずに水と米、米こうじだけで醸す。そのため米本来のうま味が楽しめる。

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2103764 0 ニュース 2021/06/06 05:00:00 2021/06/06 05:00:00 2021/06/06 05:00:00 出品された酒を審査する県産業技術センターの職員ら(鳥取市若葉台南で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210605-OYTNI50011-T.jpg?type=thumbnail

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