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輸出見据え ビーガン認証
7酒蔵 安心安全を提供
インド進出を計画している県内の酒蔵が、ビーガン(完全菜食主義者)の人たちにも日本酒を楽しんでもらおうと、動物由来の材料を使っていないことを証明する「ビーガン認証」を取得した。人口13億人のうち、約3割がビーガンやベジタリアンといわれるインドは、日本酒がほとんど流通していないのが現状で、ビーガン認証を本格的な輸出や市場開拓につなげたい考えだ。(門前光)
「この酒なら、この料理と器」「いろんな料理に合わせられそう」――。
今月上旬、鳥取市内の飲食店で、ビーガン認証を受けた日本酒の輸出向けパンフレットで使う写真の撮影会が開かれた。蔵元らが集まった会を取り仕切ったのは、インドで日本酒をPRするオンラインコミュニティーを運営し、日本酒造組合中央会(東京)の海外業務グループでマネジャーを務めている江岡美香さん(55)。諏訪酒造(智頭町)の
県内の酒蔵は、日本酒の国内消費が落ち込む中、海外に活路を見いだそうと、2019年末に県和酒輸出蔵元協議会を設立。当初は13蔵が参加していたが、人手不足などを理由に断念する蔵があり、現在は七つの蔵が「チーム鳥取・インド輸出蔵元会」として、人口の多いインドをターゲットに定めて活動している。
ビーガンは、肉や魚、乳製品など、動物由来の食材を一切食べない完全菜食主義者のことで、インドは、宗教上の理由などから菜食主義をとる場合が多いという。ビーガン認証は、国内ではNPO法人「ベジプロジェクトジャパン」(東京)が出している。
日本酒は米と
「最終的には、日本酒をきっかけに鳥取県へのインバウンド(訪日外国人客)を増やしたい」と江岡さん。来春に7蔵で500~600本を初輸出する予定で、新型コロナウイルス収束後を見据えて、日本酒とともに鳥取の
若い人の消費 期待 江岡さん
コーディネーターの江岡美香さんに、インド輸出への課題と展望を聞いた。
――日本酒の認知度は。
イギリスの占領下にあったためか、酒はウイスキーなど蒸留酒がメイン。10年くらい前にワインが出てきたが、日本酒はほとんど見ない。
――消費は期待できるか。
知らない酒だからこそ、先入観なく飲んでもらえる。インドで試飲会を開いたら、「この酒は温めて飲みたい」「この料理に合うはず」と、様々な意見が出た。IT企業が多いことから、若い人の消費も見込める。
――輸出の課題は。
関税が高い。大きな酒造会社の酒は少し流通しているが、値段は6倍くらいにもなっている。酒の取り扱いにも慎重で、インターネットでの販売も制限されている。
――鳥取の酒の強みは。
蔵数は少ないが、味わいはバラエティー豊か。契約農家の米を使う蔵が多いので、原料から誰がどのように造っているのかが分かる。安全安心を売りにする上で、これ以上の利点はない。
<えおか・みか> 北海道生まれ、東京育ち。外資系金融機関に勤務していたことがあり、ミャンマーなど東南アジアでの居住経験もある。日本酒に魅力を感じ、昨年3月に、オンラインコミュニティー「Sake Club India」を設立し、インド人を対象に日本酒を紹介している。