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<1>変わる街 癒えぬ心の傷

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夏祭り会場だった空き地で手を合わせる杉谷さん(25日午前7時11分、和歌山市園部で)=東直哉撮影
夏祭り会場だった空き地で手を合わせる杉谷さん(25日午前7時11分、和歌山市園部で)=東直哉撮影

 ◇犠牲者の姿 今も脳裏に

 「カレー事件被害者の会」の副会長、杉谷安生さん(71)は、20年前の様子をはっきりと覚えている。

 美山村(現日高川町)での仕事を終え、軽トラックを運転して和歌山市の自宅に帰る途中だった。夕方、市内に入った頃、携帯電話が鳴った。

 「娘さんが吐いて、病院で点滴を受けている。すぐ来てください」

 突然の知らせに動転した。高校2年の娘は、友人と園部第14自治会の夏祭りに行ったはずだ。電話はその友人の親からだった。

 園部の外科病院に駆けつけた。娘は嘔吐おうとを続けていた。点滴を終え、自宅に連れて帰ろうとすると、路上に座り込み再びもどした。「怖い」と、苦しそうに訴えた。

 周りで同じように吐いている人が何人もいた。近くにあった消防の出張所に飛び込み、別の病院を紹介してもらった。「あんたら忙しいやろから、自分で連れて行く」。娘を車に乗せ、懸命に走った。

          ◇

 園部第14自治会は80年代に開発された新興住宅地だ。事件が起きたのは、住民同士の親睦を深めるために開かれた夏祭り。そこで振る舞われたカレーにヒ素が混入された。

 当初、毒物による事件とは分からず、「食中毒」と考えられていた。ヒ素が混入されたなど、誰も想像すらしなかった。

 杉谷さんの娘は入院したが、4日で退院できた。同じカレーを食べた4人が亡くなったことで、食中毒だと考えていた病院も処置の仕方が変わったという。「お前は亡くなった人たちに生かされてるんや」。あれ以来、娘に言い聞かせてきた。

 16歳だった娘は今、結婚して30代半ば。2人の孫は小学生になる。成長を喜ぶ一方、亡くなった4人に申し訳ないような気持ちも抱いてきた。

 事件から20年となった25日の朝、夏祭り会場だった空き地を訪れ、静かに手を合わせた。

          ◇

 この20年で、園部の街も変わった。夏祭り会場の空き地は事件後、住宅が建ち、少し狭くなった。あの夜、救急車が殺到したそばの県道は、2車線から4車線に拡幅され、以前より明るい雰囲気になった。

 家族向けのアパートも増えた。昨年引っ越してきた会社員(28)は「カレー事件のことは知っているが、特に印象はない。ここは駅やスーパーに近く住みやすい」と話す。事件はもう、どこか遠い世界の出来事なのかもしれない。

 ただ、事件を経験した住民たちの心には、今も深い傷が残っている。住民の男性(67)は、夏祭り会場の近くで腹を押さえて嘔吐おうとを繰り返した住民たちの姿が忘れられない。

 「絶対カレー食べたらあかんぞ」。あの時、自治会役員から注意された。自分も苦しいのに、病院に向かう住民に付き添っていた副会長の田中孝昭さん(当時53歳)だった。翌朝、搬送先の病院で亡くなったと知らされた。

 男性は言う。「少しずつ、昔みたいに住民同士で冗談も言い合えるようになってきた。でも、事件の話は、今も絶対にしない」

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33841 0 毒物カレー事件 20年 2018/07/26 05:00:00 2018/07/26 05:00:00 祭り会場だった空き地に手を合わせる杉谷さん(7月25日午前7時11分、和歌山市園部で)=東直哉撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180725-OYTAI50014-T.jpg?type=thumbnail

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