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<2>救急医療 教訓生かす

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事件当日の指令室の慌ただしい状況を時系列で伝える文書。辻さんが作成した=東直哉撮影
事件当日の指令室の慌ただしい状況を時系列で伝える文書。辻さんが作成した=東直哉撮影

 ◇患者対応 全病院が情報共有

 和歌山市消防局の指令室長だった辻守さん(72)は、ちょうど自宅で夕食のカレーを食べていた。「この暑いのに、カレーか……」。20年前の7月25日。非番だったこの日、最高気温は32度を記録している。

 午後7時35分。突然、電話が鳴った。部下からの報告だった。「園部の夏祭り会場で、食中毒のような症状が起きています。患者は10人です」

 少し嫌な予感がして、車で職場に向かった。指令室のドアを開けると、部下たちが情報収集に追われていた。

 北署救急隊が4人を搬送。西署救急隊は5人。河南救急隊も5人――。現場から搬送される患者は、刻一刻と増えていった。

 「まだ現場に30人ぐらい患者がいます!」。追加出動すべきか、部下は迷っていた。市内に救急隊は11しかない。すでに6隊が出動している。追加出動させると他の事案が起きた時に対応できなくなる。

 「今、苦しんでいる人を助けよう」。辻さんは思い切って11隊全てを出動させた。市消防局始まって以来の事態だった。

          ◇

 「わしは最後でいいから――」

 激しい吐き気に襲われながら被害者全員が救急隊に搬送されるのを見届け、最後に運ばれたのが、自治会長の谷中孝寿さん(当時64歳)だった。

 「運ばれてきた時、すでに血圧は100を切っていた。顔面蒼白そうはくで明らかに重症だった」。搬送先の誠佑記念病院(和歌山市)で治療にあたった上野雄二理事長(69)は振り返る。

 蘇生させるため、血圧を上げるドーパミンを投与し続けた。しかし、翌日午前3時過ぎ、谷中さんは息を引き取った。

 当初は「集団食中毒」と考えられていたが、「本当にこれが食中毒なのか。死ぬほどの症状が出るのはおかしい」と感じた。ヒ素中毒だと分かったのは、ずっと後だった。

 食中毒との思いこみがなければ、より適切な処置が取れたのではないかと、今でも悔やむ。「予断を持ってはいけない。あれ以来、『食中毒を見たらヒ素中毒と思え』という気持ちで診察に当たっている」

           ◇

 県立医大の高度集中治療室センター次長だった篠崎正博さん(73)も、一報を聞いてすぐ、県立医大病院に患者30人を受け入れる体制を整えた。

 間もなく4人の被害者が運ばれてきた。症状から「農薬による中毒ではないか」と思い、胃の洗浄などの応急処置を施した。その結果、4人の症状は和らいでいった。

 しかし、それ以上は搬送されてこなかった。多くの被害者たちは、夏祭り会場から遠く離れた医大病院よりも、より近い病院へ優先的に運ばれた。

 「病院によって中毒への対処能力は差がある。症状の重さによって搬送先を選んでいれば……」。当時の反省点だという。

 事件後、県内では、病院ごとの救急患者の受け入れ可能人数などの情報を共有するシステムを導入した。現在、県内83の病院全てが登録している。「事件の反省から、救急医療の重要性が見直された。救える命は確実に増えている」

 事件を通し、辻さんも日頃からあらゆる事態を想定しておくことの大切さを学んだという。「消防は想定外を作ってはいけない」

 教訓は生かされている。

無断転載・複製を禁じます
34205 0 毒物カレー事件 20年 2018/07/28 05:00:00 2018/07/28 05:00:00 辻さんが作成した事件当日の指令状況(7月26日午後5時22分、和歌山市で)=東直哉撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180727-OYTAI50003-T.jpg?type=thumbnail

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