<4>地域の見守り この先も

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交番で相談員を務める太田さん。園部を見守り続けている(25日、和歌山市六十谷の有功交番で)=東直哉撮影
交番で相談員を務める太田さん。園部を見守り続けている(25日、和歌山市六十谷の有功交番で)=東直哉撮影

 ◇有功交番、被害者に寄り添い

 毒物カレー事件が起きた和歌山市園部。この地域の安全を見守る有功いさお交番で、丸山勝さん(69)が所長になったのは2002年。7年後には、後輩の太田達也さん(66)が次の所長に就いた。

 二人とも、元は刑事。定年を迎えて所長を辞めた後は、この交番の相談員になり、園部とかかわってきた。遺族と被害者に寄り添い続けた20年だった。

   ◇

 事件の後、遺族は悲しみに沈んでいた。被害者も心に深い傷を負っていた。丸山さんは刑事としてカレー事件の捜査に当たってきたが、「この地域を誰かが見守り続けないといけない」と、交番勤務への転身を志願した。

 最初は、うまくいかないこともあった。丸山さんが交番に赴任したばかりの頃、被害者らの家を一軒ずつ巡回していた最中に、突発事案があり、現場に向かわねばならなくなったことがあった。

 次の日、前日に行けなかった被害者宅を訪ねると、「昨日は横の家まで来たのに、なんで帰ってしまったんよ」と不審の目を向けられた。事情を話し、少しずつ信頼関係を築いていくしかなかった。

 「人間性もいい。事件のことも分かっているし、たっちゃんしかおらん」。太田さんは丸山さんに請われる形で交番に来た。丸山さんの思いを受け継ぎ、毎日、パトロールや相談を続けた。遺族や被害者が交番の前を通りかかると、窓から身を乗り出して、笑顔で手を振った。

 太田さんは今も相談員を続けている。「遺族や被害者が困った時に、何かの役に立てればいい。どんな役に立てるかわからんけど」と笑う。それでも今では、「何でも相談できて心強い。交番からいなくなったら困る」(被害者の女性)という存在だ。

   ◇

 事件から20年となった今年、変化があった。

 二人は、犠牲者4人の命日(7月26日)には毎年、遺族宅を訪問し、仏壇の前で手を合わせてきた。

 自治会長だった谷中孝寿さん(当時64歳)。副会長だった田中孝昭さん(同53歳)。高校1年だった鳥居みゆきさん(同16歳)。小学4年だった林大貴ひろたか君(同10歳)。4人の冥福めいふくを祈り、遺族を励ましてきた。

 今年も7月26日、二人は今の有功交番の所長・和田文宏さんと3人で、いつものように遺族宅を訪問し、仏壇の前で手を合わせた。

 不思議と、どの遺族の表情も穏やかに見えた。少しの間、仏前でたわいもない会話がはずんだ。これまでの命日で初めての雰囲気だった。

 「事件の傷は消えんやろうが、20年という時間でだいぶ癒えたんかなあ……」

 二人は少し、明るい気持ちになった。

   ◇

 有功交番に勤務する警察官は今、6人。事件後の最も多い時期(11人)に比べると、ほぼ半数になった。太田さんは「少ないながらも、彼らも日々、遺族や被害者らと接し、警らなどで安心を与えてくれている」と話す。

 その一方で、事件を知る警察官が、年々減っていることを心配する。今年4月には、事件当時1歳にも満たなかった若い警察官も赴任した。

 「20年が過ぎ、事件に対する世間の関心も薄れてきている。遺族や被害者の支援はむしろこれからが重要だ」と、感じている。

無断転載禁止
34787 0 毒物カレー事件 20年 2018/08/01 05:00:00 2018/08/01 05:00:00 交番所内の太田さんの席は窓側。存在が住民たちに安心感を与えている(7月25日午後3時35分、和歌山市園部の有功交番で)=東直哉撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180731-OYTAI50005-T.jpg?type=thumbnail

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