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吹き矢競技 普及に尽力 1964年自転車競技に出場・福原 広次さん

吹き矢の指導をする福原さん(左から2人目)(和歌山市で)
吹き矢の指導をする福原さん(左から2人目)(和歌山市で)
五輪のレーススタート直前、笑顔で手を上げる福原さん=福原さん提供
五輪のレーススタート直前、笑顔で手を上げる福原さん=福原さん提供

 1964年東京五輪に出場した県ゆかりの元選手の中には、今も様々な形で県内のスポーツ振興に貢献している人がおり、今回の東京五輪にも期待を寄せる。

 2019年12月、しんと静まり返った和歌山市内の体育館。両足を肩幅ほど開いて長さ1メートル以上ある細い筒を口元で構えた数人の男女が、大きく吸った息を吹くと、筒から鋭く矢が放たれ、数メートル先の的に命中。参加者が「息を止めるのしんどいね」と漏らすと、明るい笑い声が響いた。

 この競技は「スポーツウエルネス吹矢」。前回東京五輪で自転車競技に出場した福原広次さん(74)が、和歌山市内を拠点に高齢者らに広めている。

 福島県出身。自転車では、前を走る選手に食らいついて離れず、「スッポンの福原」とあだ名がついた。五輪では19位。「沿道で大勢に応援してもらい、素晴らしい経験だった」と話す。

 和歌山県で71年に開かれた国体への出場を機に和歌山市に移住、高校生に競技を教えた。指導の第一線を退いていた約10年前、知人から吹き矢を教えてもらい、体験したことが転機となった。的の中央に矢が刺さる爽快感のとりこになった。

 「初心者に易しい一方、姿勢を正したり、腹筋を使ったり、体への適度な負荷もある。生涯スポーツとして広めたい」

 すぐにこの競技の県協会を設立し、指導者の資格も取得。「当時、県内で経験者はゼロだった」(福原さん)が、各地で体験会を実施、徐々に競技人口が広がった。今は県内19支部に40~90歳代の約470人が所属、和歌山市内などで週3回、練習会を開いている。

 五輪当時は「負けたくない」と必死に練習したが、今は「健康のため」と目的も種目も変わった。「でもそれでいい」。今はそう思える。メンバーには「100歳まで続けよう」と呼び掛けている。

 五輪に吹き矢はないが「大舞台で戦う若者たちから、見る側の私たちは勇気や感動をもらう。そのエネルギーを『スポーツがしたい』という高齢者の熱意に転換して、競技人口をさらに増やしたい」と意気込む。

感謝の言葉「つながる」 1964年体操に出場・早田 卓次さん

自身が前回の東京五輪開会式などで着用した制服を前に、思い出を語る早田さん(東京都で)
自身が前回の東京五輪開会式などで着用した制服を前に、思い出を語る早田さん(東京都で)
早田さんが五輪出場時に付けていたゼッケン
早田さんが五輪出場時に付けていたゼッケン

     ◇

 前回東京五輪の体操で二つの金メダルを獲得した早田卓次さん(79)(田辺市出身)は、子どもらにスポーツの素晴らしさを伝える活動を続けている。

 64年10月10日、東京・国立競技場で行われた開会式。早田さんは、一歩足を踏み入れて息をのんだ。客席は超満員。観声が地響きのように伝わる。我を忘れて手と足が一緒に出た。「これが本番ならえらいことだ」

 でも、これで度胸が付いた。大声援の中でも冷静な演技を見せ、団体総合と種目別つり輪で金メダル。田辺市では祝いのちょうちん行列が行われた。母には「応援してくれている人に感謝しなさい」と諭された。

 「地元のみんなが喜んでくれてうれしかった。気ままに体操をしてこられたのも周りの支えがあったからこそだと気づかされた」

 その思いを胸に、今は五輪経験者らでつくる「日本オリンピアンズ協会」(東京)の理事長として、子どもらに様々な競技を教えるため、全国を巡る日々だ。

 「公園で野球すらできない今だからこそ、スポーツに触れる機会を増やし、たくましく成長するのを手助けしたい。それが応援してくれた人への恩返しになる」

 2019年11月、和歌山北高であった協会主催の体操教室。集まった小学生から高校生まで約100人に「両親や先生、指導者に感謝の気持ちを言葉で伝えなさい」と説いた。「人の縁は『ありがとう』の言葉でつながる」と力を込める。

 これまで全国で教えてきた中で、20年東京五輪を目指して頑張る子どもたちにたくさん出会った。「実際に五輪に出場する選手もきっといると思う」と話す早田さんは、〈東京五輪後〉を担う子どもたちに呼び掛ける。

 「遊びからでいいからスポーツを始めてみようじゃないか。勝ち負けだけじゃない。優しさ、明るさ、感謝の気持ちといった人間性全てを育ててくれる。スポーツを通じて広げた人の輪が、人生を豊かにするんだ」

(おわり、この連載は坂戸奎太が担当しました)

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984511 0 TOKYO2020 和歌山から 2020/01/06 05:00:00 2020/01/06 05:00:00 2020/01/06 05:00:00 吹き矢の指導をする福原さん(左から2人目)(和歌山市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200105-OYTAI50036-T.jpg?type=thumbnail

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