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<5>希望への転生 夢見て

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田中恭吉〈冬虫夏草〉1914年 木版(縦15・7センチ、横13センチ)
田中恭吉〈冬虫夏草〉1914年 木版(縦15・7センチ、横13センチ)

 地中に腰を下ろした人の背中から植物が生え、光の下で花を咲かせている。題名の冬虫夏草は昆虫類に寄生して地上に生えるキノコの一種だが、ここで表されているのは実在する冬虫夏草の姿ではない。

 作者の田中恭吉(1892~1915年)は、和歌山市の生まれ。東京美術学校(現在の東京芸術大学)で日本画を学ぶも、やがて仲間との回覧雑誌や木版画の制作にのめり込み、詩と版画の雑誌「月映(つくはえ)」を誕生させた。

 しかし、当時、不治の病だった肺結核を患って、その名をほとんど知られることなくわずか23歳で夭折(ようせつ)した。その短すぎる生涯の最後の1年半は故郷で過ごし、雑誌の刊行は東京にいる仲間との手紙のやりとりによって続けられた。この作品は、そうしたなか木版画を作る体力も奪われ、旧作しか発表できずにいた彼が、かろうじて届けることのできた新作だった。

 失われていく命が新たな植物に転生する瞬間の幻影のようなイメージは、絶望のなかで見いだされた明るい願いを思わせる。

 没後、田中の作品は萩原朔太郎の詩集「月に吠える」の挿画として人々の知るところとなった。彼の1000点を超える作品・資料は、現在、県立近代美術館で収蔵され、折々に公開されている。(県立近代美術館学芸課長 井上芳子)

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1833960 0 県立近代美術館50周年 コレクションの名品 2021/01/27 05:00:00 2021/01/27 05:00:00 2021/01/27 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210210-OYTAI50011-T.jpg?type=thumbnail

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