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<6>淡さまとわせたムンク

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エドヴァルド・ムンク〈病める子〉1896年 リトグラフ・紙
エドヴァルド・ムンク〈病める子〉1896年 リトグラフ・紙

 うつろな表情で右側を見つめる少女。15歳で亡くなった姉の死の床の光景を描いた、エドヴァルド・ムンクの代表的な版画のひとつだ。

 眼差まなざしの先に光が差すように見える一方、二重になった背後の影は迫り寄る死の象徴にも取れる。描線がそのまま写し取れるリトグラフの効果が存分に発揮されているが、実は描かれているのは大きな白い枕だ。

 この作品には先行する同題の油彩画がある。窓際のベッドで死を悟った少女と、その傍らで女性がうつむく光景だ。その少女の頭部を切り取ったのがこのリトグラフで、油彩と同構図で左右反転した銅版画もある。

 基本的に版画は、原画と左右が反転する。そのため銅版画の少女は左を向いている。しかし、本作の少女は油彩と同じ右向きだ。つまりムンクは、一度反転した銅版画からこのリトグラフを作った。版への転換を重ねることで画面は抽象性を増し、さらにリトグラフ独特の淡さをまとった造形へと昇華されている。各版種の間接性が持つ特殊な効果に、ムンクは気づいていた。

 家族の死がムンクの作品に深い精神性を与えたという「物語性」に目を向けがちだが、版画家ムンクは、我々が思うよりも造形的な実験家であった。

(県立近代美術館学芸員 青木加苗)

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1835865 0 県立近代美術館50周年 コレクションの名品 2021/02/10 05:00:00 2021/02/10 05:00:00 2021/02/10 05:00:00 エドヴァルド・ムンク〈病める子〉1896年リトグラフ・紙 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210211-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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