ごま豆腐 和の存在感

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濱田屋 (高野町)

竹尺で寸法を測りながら、ごま豆腐に包丁を通す濱田さん(高野町で)
竹尺で寸法を測りながら、ごま豆腐に包丁を通す濱田さん(高野町で)
真っ白でつややかなごま豆腐。伝統の深い味わいが魅力=濱田屋提供
真っ白でつややかなごま豆腐。伝統の深い味わいが魅力=濱田屋提供

 真言密教の聖地・高野山の精進料理に欠かせない「ごま豆腐」。一点の曇りもない真っ白な表面を切ってみると、まずその弾力に驚く。口にふくむと、わさびじょうゆとの相性が抜群で、コシのある食感と濃いごまの風味が広がる。明治中期に創業した老舗豆腐店「濱田屋」の一品だ。

 保存料などを使用せず、店では、奥の工房で作りたてのものを販売する。原料に中南米産のごまを使用するのは、あっさりしているのに味わい深いから。皮を取り除くことで余分な油が抜け、さらにさっぱりと食べやすくなるという。お吸い物や鍋にも合い、和三盆や黒蜜をかければデザート感覚で楽しめる。

 1877年(明治10年)ごろ、九度山町出身の初代が現在の高野山大学の場所で、僧たちに向けて木綿豆腐を作ったのが始まり。近辺の高野豆腐業者にも卸していたが、次第に高野豆腐産業が廃れ、1950年代に、ごま豆腐を主力に切り替えた。4個入り税込み1600円と高級品だが、ごまと吉野本葛、水のみでつくる伝統的な「高野山名物」は寺院や参詣者らに根強い人気を誇る。

 5代目店主の濱田朴穏ぼくおんさん(47)は、12年前に店を継いだ。「最初は新しいものが作りたくて、材料を変えたり加えたりしたが、納得のいくものはできなかった。やはり、すでに完成されたものなのだと実感した」と振り返る。

 以来、機械や時代に合った売り方を取り入れながら、代々受け継がれてきた伝統製法と味をいかに守り続けるかに腐心してきた。

 朝4時、まだ暗いうちからごま豆腐を作り始める。煮立った材料に向き合い、般若心経などを唱えるのは、「弘法大師さまのお膝元で働いている僕たちにとって、とても大事な瞬間」と言う。

 儀式を重んじる一方、ごま同士をすり合わせて皮を取ったり、ごまをいたりする工程には機械を導入し、業務の効率化も図っている。

 販路の拡大にも挑む。これまで店舗での対面販売が中心だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて参詣者が激減。計画を前倒しして昨年6月からオンラインショップでの販売を始めた。製造から2日ほどしかもたないため、北海道や沖縄などの遠方には配送できないが、順調に注文数を伸ばしている。

 濱田さんは、「ごま豆腐はお膳のなかの一品なので、その和を乱してはいけない。でも心を込めて作るからには、印象に残る『存在感のある豆腐』を、より多くの人に届けたい」と言う。

 高野山の<味>の歴史には、そんな作り手の情熱が秘められている。(大田魁人)

<企業MEMO> 1877~87年ごろに高野町で創業。1980年に株式会社「濱田屋」を設立し、現在はごま豆腐と抹茶ごま豆腐を製造・販売している。従業員は10人で、うち4人が作り手。

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