一枚岩 映画スクリーンに
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3月 古座川で若者主催
スクリーンは国内最大級の巨岩です――。古座川町相瀬で3月中旬の夜、国天然記念物「一枚岩」を使って、町の魅力を伝える映像を上映する映画祭が行われる。地元の若者の主催で、資金はインターネットのクラウドファンディング(CF)で集めた。新型コロナウイルスの感染防止で人の密集を避けるため、上映に招くのはCF出資者限定とするが、主催者は「初回を足がかりに、定期的に開催し地域を盛り上げたい」と意気込む。(大場久仁彦)
アユ火振り漁など上映
「大地を見上げる映画祭 2021」と銘打った。高さ100メートル、幅500メートルある一枚岩のうち、高さ約15メートル、幅約20メートルの範囲をスクリーンにする。アユの火振り漁、ミツバチの巣分かれ、清流・古座川の水中など町内の象徴的な映像や、主催者の活動記録を披露する。
観客は河川敷に座り、映画とともに星空も楽しんでもらう。現地に来られない人向けに、リモートでライブ映像を流す計画も進めている。
企画したのは、道の駅「一枚岩 monolith(モノリス)」を運営する田堀穣也さん(34)。同町直見出身で、大学卒業後、Uターンし小学校教師と消防士として働いた。風の音や川のせせらぎ、緑の山々、獣たちの命の営み……。仕事で町内をくまなく巡り、その都度新たな魅力が見つかったといい、「古里への愛着がさらに深まった」と振り返る。
魅力的な町なのに、周りの若者は仕事を求め都会へと流出していく。「古座川の可能性を未来へつなげたい。そのために、雇用を増やし、町をアピールする場が必要だ」と感じ始めた。起業の夢を抱いていたこともあり、道の駅の委託経営の募集を知ると迷わず手を挙げた。昨年6月、妻裕美子さん(34)や賛同する友人らと運営に乗り出した。
活性化に向けた拠点を構え、次は「古座川のシンボル・一枚岩ならではのイベントを」と、映画祭を企画した。一枚岩は全体的に見て平らなため、スクリーン代わりになると考えたという。
それでも、岩の表面に鮮明な画像を映し出すためには、高額なプロジェクターが必要だ。田堀さんは県の「ふるさと納税型CF」に着目。100万円を目標額に協力を呼びかけると、賛同した約170人から、予想の2倍となる約200万円が50日余りで寄せられ、企画が実現する見通しとなった。
田堀さんは、「まさに奇跡的。『返礼は要らないから頑張れ』と言ってくれた人もいた」と感謝する。余った資金は、周辺機器の購入や今後のイベント開催費用にも充てることを考えているという。
一枚岩では、町が1986年、町制施行30周年記念イベントとして「映画祭」を開いたことがある。当時、町職員として企画に当たった仲本耕士副町長は「赤茶色の岩が色を吸い込んで、ボヤッとした映像になったが、大勢の人が集まった」と懐かしむ。
今回も、大々的に人を集めたかったが、コロナ禍を考慮して断念し、CF出資者に限定したという。田堀さんは「コロナ収束後は盛大にPRしたい。映画祭を通じて、人と自然が心地よくつながる町を目指したい」と力を込めた。