希望届ける 認知症大使
完了しました
御坊市創設 山際さん・塩路さん任命



御坊市は、認知症になっても希望を持って暮らせることを本人が発信する「あがら(私たち)の総活躍希望大使」を創設し、17日に山際裕三さん(81)と、塩路
ハーモニカや筆耕 前向きな暮らし発信
山際さんと塩路さんはいずれも認知症と診断されている。
山際さんは郵便局を定年退職後、家庭菜園や日曜大工など多くの趣味を楽しんできた。特にハーモニカが得意で、楽譜があればどんな曲でも演奏できるという。「人に呼ばれてハーモニカを吹きに行くのはうれしい」と話し、演奏を聴いてもらえるのが生きがいという。
塩路さんは若い頃、農協職員として20年勤務。パソコンのない時代、手書きで書類を清書し、そこできれいな字を習得した。今も字を書くのが大好きで毎朝15分、般若心経の写経を続けている。達筆で賞状の筆耕を依頼されることも多く、「90年以上の人生で、今が一番充実している」といつも話しているという。
国は2019年6月にまとめた認知症施策推進大綱で、「地域で暮らす認知症の本人が自らの言葉で語り、前向きに暮らす姿を積極的に発信することが大切」と指摘。昨年1月に全国の5人を「認知症本人大使・希望大使」に任命した。同時に、都道府県ごとに「地域版希望大使」の任命を目指しており、静岡県と香川県が任命している。
だが、都道府県単位だと活動範囲が広く、本人の負担も大きい。そこで御坊市は全国で初めて市町村単位での任命を計画。介護事業所から推薦を募り、医師や介護職、市職員らでつくる会議を今月10日に開き、山際さんと塩路さんの任命を決めた。
任命式で、三浦源吾市長が「お二人の生き生きとした姿を伝えることを通して、認知症への理解を深めたい」とあいさつ。塩路さんが毛筆で文字を清書した任命証を手渡した。山際さんは、その場で歌謡曲「憧れのハワイ航路」をハーモニカで演奏し、なごませた。
山際さんは取材に「新型コロナの影響で小学校で披露する機会が減ったが、依頼があれば喜んで行かせてもらう」と話し、塩路さんは「もっと長生きして毎朝の写経と筆耕を続けたい」と笑顔を見せていた。
市の担当者は「認知症の人、これからなるかもしれない人に『希望のリレー』をつなげられるよう、認知症の会議への参加や演奏される姿など活躍をいろんな場で発信する」と話した。