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名所訪ね「人の温かさ」紹介


九度山町の映像クリエイター、村井克貴さん(24)が、県内の全30市町村を訪ね歩いて人々や名所を紹介する動画を作り、インターネットで発信する個人プロジェクト「ワカマル30FILM」を進めている。現在4本を公開しており、「和歌山の『人の温かさ』とそれぞれの街の魅力を届けたい」と意気込む。(大田魁人)
〈よそからここへ来たらね、流れる時間が違うっちゅうと〉〈湯浅ええ町やさけなあ、みんなに知ってほしいわ〉
穏やかなピアノの音色とともに、湯浅町でたこ焼き屋を営む中高年の女性が町の魅力を語る。画面には、日本遺産に認定されている伝統的なしょうゆ蔵などが残る路地や、陽光に照らされた町並みが映し出された。
昨年12月に初めて配信した動画「
九度山町で生まれ育った。映像を撮り始めたのは地元の金融機関で働いていた昨年5月頃。学生時代から趣味で写真を撮っていたが、「一枚の写真よりも、映像の方が、たくさんの思いを込められる」と考えたのがきっかけだ。ドローンや手ぶれ補正機器「スタビライザー」などの機材を買い集め、すぐにのめり込んだ。「映像を使った表現者になりたい」と、5か月後に退職。フリーランスの映像クリエイターになり、プロジェクトを始めた。
「地図を見て直感で最初の撮影地に選んだ」という湯浅町では、地元の魅力を語ってくれる人を探す聞き込み調査から開始。1日かけて複数の地元住民に声をかけて紹介されたのが、湯浅町で生まれ育ったというたこ焼き屋の女性だった。「祖母と孫のような感覚で話してくれ、多くの人にこの『温かさ』を伝えたいと改めて思った」という。
高野町の動画(約5分)では、「様々な町の表情を収めたい」と、半年間、5回以上の撮影を重ね、紅葉や新緑の山々が印象的な作品に仕上げた。全ての動画で取材から撮影、編集まで1人で担う。
最近では、プロジェクトの動画を見た県職員や県内のミカン農家などから、事業やイベントのPR動画製作の依頼が入ってくるようになったが、合間を縫って5本目以降の取材を進めていく。「どれだけ忙しくてもこのプロジェクトにはこだわりたい。地元の人の言葉に耳を傾けながら、美しい和歌山を撮り続ける。それが、自分を育ててくれた故郷への恩返しになるはず」と力を込める。
動画は「ワカマル30FILM」のインスタグラム(@wakayama30_official)か、ユーチューブチャンネルで。