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運転の元県職員 猶予判決
和歌山市で昨年9月、県職員だった男(60)(昨年10月に懲戒免職)の車が市内の会社員男性(28)をはねた事故があった。元県職員は酒を飲んで運転しており、逮捕、起訴され執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。一方、被害者の男性は大けがを負い、後遺症に苦しむ。「理不尽としか言いようがない。飲酒運転をしない、させない社会にしなければ」と強く願う。(村越洋平、島村瑞稀)
被害男性 重傷負い後遺症
■駐車場で急加速
昨年9月14日午後10時前、男性はスーパーの駐車場で自転車にまたがり、職場の同期と談笑していた。駐車場に入ろうとした時速約30キロの車がフェンスに衝突して急加速。自転車ごと約13メートルはね飛ばされた。左頬や鼻、右足首の関節の骨を折るなど、加療1年の重傷を負った。
運転していた元県職員の呼気から基準の2倍以上のアルコールを検出。自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)と道路交通法違反(酒気帯び運転)の両容疑で逮捕、起訴された。
■「あまりに身勝手」
事故に遭った男性は東京都出身。4年前から和歌山市内の職場で働く。高校時代には野球部の主将を務め、職場の同僚らと草野球を楽しんでいた。
ところが事故で右足首の関節が変形し、走ることや深くしゃがむことが難しくなり、野球もできなくなった。回復を信じて週1回、リハビリに励む。「ジョギングくらいはできるようになるかも。諦めない」
公判にも足を運んだ。
元県職員は缶ビール3本を飲んだ後、予備の洗剤を買うために運転していた。6月14日の第2回公判では「大変なけがを負わせてしまい、心よりお
男性は「あまりにも身勝手。反省しているとは到底思えなかった」と憤る。元県職員が精神の不安定から飲酒を続けていることも明らかになった。
■「生きがい奪われた」
6月28日の判決で、元県職員に懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月)が言い渡された。裁判官は反省の弁を述べていることなどを執行猶予の理由に挙げた。
男性は「執行猶予は納得できない」として地検に控訴を求める上申書を出すことを検討しているという。「生きがいを奪われ、何のために生きるのか考えた時もある。でも周囲の人に飲酒運転の愚かさを伝えていきたい」
減少傾向 外出控えも影響

県警によると、飲酒運転の厳罰化を盛り込んだ改正道路交通法が施行された2007年以降、県内の飲酒運転による人身事故は減少傾向にある。
19年には県が「飲酒運転の根絶に関する条例」を施行。5年間で2回、飲酒運転で摘発された県民に対し、60日以内に医療機関を受診するよう命令できると定め、従わない場合は5万円以下の過料を科す。県によると、これまで5人に命令を出したという。
20、21両年に県内で発生した飲酒運転による人身事故はそれぞれ22件、19件と、統計が残る期間では2年連続で過去最少となった。だが、県警は「新型コロナウイルスの感染拡大による外出控えも要因の一つ」とみる。飲酒運転の根絶を目指し、取り締まりを強化する。
00年に飲酒運転のトラックによる事故で娘の由佳さん(当時19歳)を亡くした和気みち子さん(65)(栃木県)は「由佳に『おかえり』と言えなくなって22年。一人の身勝手な行動で、家族も娘の友人も、娘に関わっていた全員が今もずっと悲しい」と話す。「飲酒運転は被害者だけでなく、加害者の家族も不幸にしてしまう。そのことに気づいて」と訴える。