完了しました
夏の参院選山形選挙区(改選定数1)は、29日に自民党県連が候補者を正式決定したことで、与野党候補が戦う構図が固まった。自民の候補擁立の遅れは、国民民主党との歩み寄りが影響し、両党の接近に伴って、山形選挙区での野党共闘関係は崩れた。想定される6月22日の公示日まで3週間あまりとなり、各陣営は臨戦態勢に入る。
29日午後、山形市荒楯町にある結婚式場は大きな拍手に包まれた。自民県連の選対委員会議が開かれ、前自民県議の新人、大内理加氏(59)が、約120人の支部長らから満場一致で公認候補となることが承認された。自民にとって、全45選挙区での候補擁立が現実となる瞬間だった。
大内氏は会議後の記者会見で、「候補者を擁立できなければ、岸田政権の政策を県民に伝え、議論する機会を失う。山形の有権者だけが、その議論の機会がないことは避けなくてはと決意した。わずかな時間だが、精いっぱい戦っていきたい」と力説した。同席した県連会長の遠藤利明党選挙対策委員長は「党本部の最重要候補者として指定し、山形選挙区に臨む」と語った。
候補擁立を巡り、自民は迷走を続けた。
当初の擁立目標は昨年内だったが、先送りされてきた。国民現職の舟山康江氏(56)に「勝てる候補はなかなかいない」(県連幹部)ことが理由の一つだったが、国民が政府予算に賛成すると、擁立見送り論が浮上。今月中旬には舟山氏の推薦案まで出る始末だった。これに対し、党内や県連内の主戦論は根強く、県連は20日、独自候補擁立の方針を確認し、大内氏擁立に
遠藤氏は候補の選定過程で二十数人に会ったといい、2月上旬には「3人に絞り込んだ」と明かしていた。今月27日、擁立の経緯を県議に説明した後、報道陣に対し、「3人に絞った時、既に大内さんに話し、場合によってはお願いすると話していた。国民との色んな件が整わない時は、大内さんでいくということは既に総裁、幹事長らに話していた」と打ち明けた。
◇
「山形選挙区を巡っては様々な臆測や疑心暗鬼があったが、ここに来て構図がはっきりしてきた。今まで以上に気を引き締めて、この選挙戦を乗り切りたい」
舟山氏は29日、山形市松山の事務所で行われた、1回目の総合選対会議で、陣営幹部ら約70人を前に力を込めた。
参院選に向けては、昨年12月25日の自身の全県後援会役員会で3選を目指し、立候補を表明。今年に入ってからは国会会期中の休日は県内に戻り、全域で支持固めに奔走している。
舟山氏は前回2016年の参院選で、旧民進、社民両党の推薦に加え、共産党からも支援を受け、自民候補に圧勝。だが、今回は、共産県委員会側から求めた野党共闘の協議は実現せず、共産は独自候補として、2月7日に新人の石川渉氏(48)を擁立した。
一方の立憲民主党は県連レベルでは、国民県連、連合山形との2党1団体として舟山氏支援を表明していたが、正式には党本部の判断待ちの状態だった。ただ、自民が候補擁立を決めることに伴い、党本部から県連に対応を一任されたことを受け、県連は29日、舟山氏支援を正式に決定した。
この日の選対会議に出席した石黒覚県連代表は報道陣に対し、舟山氏がこれまでに「野党の立場」であると繰り返し主張してきたことに触れ、「山形の参院の議席を与党に渡さないために、舟山さんの勝利を目指して頑張る」と話した。
舟山氏も会議出席後、「(野党共闘の)力の結集は出来ていると思う。誤解やわだかまりが解けてきて、いよいよ形として一体感が出てきたということは強みに変わっていく」と語った。
対する石川氏は出馬表明後、街頭や小集会、講演会での演説などの活動に力を入れてきた。自民の候補擁立が正式決定した翌30日、取材に対し、「大内さんが出ると言っても、構図が大きく変わったとは思わない。舟山さんは口では『野党』だと言っているが、正真正銘の与党候補も出て、与党の人がもう1人出た感じだ」と突き放した。
山形選挙区では、NHK党新人の小泉明氏(51)も立候補を表明している。