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    • 工場で小型衛星の試作品について語る柳井社長
      工場で小型衛星の試作品について語る柳井社長
    • CFRPを素材に使う3Dプリンター
      CFRPを素材に使う3Dプリンター

     ◆“町工場”衛星試作品を受注

     山口宇部空港から車で20分ほどのところにある宇部市の産業団地・宇部テクノパーク。その一角にある機械加工会社「伸和精工」は、小型衛星の試作品製造を受注するなどし、宇宙機器産業への参入を目指している。

     従業員数は13人。製品の大きさが30センチ以内の小物の特殊加工を得意とし、大規模企業では難しい少量多品種の注文に応じてきた、いわゆる“町工場”だ。

     同社は、県が主導する形で航空宇宙産業の育成のために結成された企業体「県航空宇宙クラスター」(6社)の一員。機械加工、板金・溶接、熱処理など各社の技術力を連携させ、大手企業との競争にも挑む。

     「3Dプリンターを導入したことで、仕事の可能性が大きく変わった」。柳井宏之社長(46)は振り返る。

     同社は、元々は運送業。先代の父・政昭さん(74)が独学で旋盤加工技術を習得し、電化製品の部品修理業へ転業した。

     だが、「使い捨て時代」を迎えると、交換・修理の需要は減った。そこで政昭さんは部品を作る機械加工という新分野へとかじを切り、徐々にその技術力が認められるようになった。

     3Dプリンター導入のきっかけは柳井社長に代替わりし、医療分野へ参入したときだった。脳に埋め込む特殊なチップを開発する際、試作のたびに素材のチタンを加工する必要があり、多くの時間を要した。3Dプリンターでは短時間で試作ができ、通常の加工では難しい形状でも作れる長所に気づいた。

     昨年2月に訪れたシンガポールでの展示会では、最新のプリンター技術を目にした。金属を素材に使ったプリンターもあり、海外では実際に部品製造で活用されていることも知った。

     柳井社長はすぐさま、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を加工できるプリンターを導入。すると、小型衛星の試作や、海外の航空宇宙関連企業からも製品試作の依頼が舞い込むなど、状況が一変した。柳井社長は「(宇宙産業への参入に)手応えを感じてきた」と話す。

     県内は、宇宙航空研究開発機構(JAXAジャクサ)の機能の一部移転が実現し、衛星データがビジネスに活用できる環境が整備されつつある。昨年8月には、国から「宇宙ビジネス創出推進自治体」に選定され、様々な支援が期待されている。

     「いよいよ民間が衛星を手がける時代が来た。この1、2年が勝負だ」と柳井社長は意気込む。時代の流れに合わせ、新たな分野を開拓してきた先代の精神も継ぎ、広大な宇宙にビジネスチャンスを見いだしていこうとしている。

    2019年01月06日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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