1軒でも残ると決めた

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

(3)
(3)
世帯数が1軒のみとなった初鹿島集落(7月29日、早川町で)
世帯数が1軒のみとなった初鹿島集落(7月29日、早川町で)

 早川町には36の集落がある。移住者が地域を活気づける奈良田や、人口減の波にもまれる茂倉のような集落。そして、人口減が進んだ結果、1軒のみとなった集落もある。

 かつて6軒あった小規模集落の柳島。現在暮らしているのは工務店を営む望月敏彦さん(63)一家8人だ。

 3年前、甲府市から長男夫婦と孫たちがUターンし、一緒に住んでいる。家はにぎやかだ。生活に変化は感じていないものの、「知り合いがいなくなったさみしさはある」と打ち明ける。

 先祖は武田家に仕えた武士で落ち延びてきたと伝わる。「先祖代々住んできたという思いがある。自分が集落を守る。でも、死んだ後のことは分からない」

 中世から存在していたとされる初鹿島はじかじま集落の中心部では、地元の建設会社に勤める望月明人さん(59)が住む。他の住民は7年ほど前、町外の子どもの元へ行った。望月明人さんも町外に一時出ていたが、母の面倒を見るために戻った。母は亡くなり、今は1人で生活する。

 山を背負ったような位置で川に面し、かつては船着き場があって15軒60人ほどが住んでいたという。集落は県道沿いで身延町に近く、「不便はない」と言う。「もう年だし、よそに行ってもしょうがない。移住者を呼び込もうなんて考えられない。自分の家のことで精いっぱいだ」と淡々と話した。

 別の集落で1世帯で住んでいる男性は吐露する。「『にぎやかなところに移ったら』と言われることもある。私の代でここも終わりだが、自分が離れたら誰が守るのか」

 少子高齢化が進む日本各地で、生活に必要な施設や住宅を集約するコンパクトシティー化が図られている。

 ただ、1軒のみで暮らし続ける住民には「効率化」と相いれない思いがある。住む人がいなくなれば集落が荒廃してしまうという危機感、そして「集落を守る」という使命感に似た思いだ。

 その一方で不安はある。災害などで土砂崩れが起きて道路が寸断されたり、停電したりと生活基盤が機能しなくなったら――。望月敏彦さんは「1軒きりで(行政などが)すぐに動いてくれるか」と話す。ごみの収集などもある。

 町の担当者は各集落について、「財政的には同じ所に集まって住む方がいいが、軒数によって行政サービスが変わることはない」と強調する。移住者を増やすことは人口減対策につながるが、どこに住むかは移住希望者の「選択次第」で、集落ごとにばらつきがみられる。

 それぞれ文化や伝統があり、心のよりどころとなってきた集落が消えていくことで、町はどう変わるのだろうか。(松本健太朗)

無断転載禁止
746032 0 人口減の現場@早川 2019/08/17 05:00:00 2019/08/17 05:00:00 2019/08/17 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/08/20190816-OYTAI50013-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

 


東京オリンピックパラリンピックオフィシャル新聞パートナー

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ