こだわり光るワイナリー 土地の個性味で表現

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ブドウの状態を確かめる広瀬さん(9月24日、山梨市で)
ブドウの状態を確かめる広瀬さん(9月24日、山梨市で)
テロワールを意識するきっかけとなった「イセハラ」を手にする有賀さん(9日、甲州市で)
テロワールを意識するきっかけとなった「イセハラ」を手にする有賀さん(9日、甲州市で)

 ワイン造りの世界では、ブドウ畑の地勢や気候などの生育環境を「テロワール」という言葉で表現する。国産ブドウで造られた日本ワインの生産量日本一を誇る山梨でも注目されるキーワードだ。ブドウや土地にこだわり、テロワールを意識してワインを造るワイナリーや、テロワールの謎を解き明かそうとする研究者に迫った。(渡辺洋介)

 遠くに富士山を望み、眼下にブドウ畑が広がる。標高約750メートルに位置する山梨市牧丘町倉科のワイナリー「カンティーナヒロ」。昼夜の寒暖差が大きく、南向きの斜面に日が差し込む。ブドウ栽培に適した条件がそろう。

 「ワインの出来はブドウで8割方が決まる」。9月下旬、畑でブドウの様子を確かめていたオーナーの広瀬武彦さん(61)は語った。「牧丘のテロワールを表現するにはブドウ作りが重要だ」

 巨峰の生産で知られる牧丘地区。生食用ブドウを栽培していた家に育った広瀬さんはIT企業に勤める傍ら、栽培に従事していた。ある日、近くの醸造用ブドウ畑を使ってみないかと持ちかけられた。ワイン造りは素人だったが、55歳で早期退職を決断。山梨大や峡東地域のワイナリーで学び、昨年4月にカンティーナヒロをオープンさせた。

 生食用ブドウの栽培経験を生かし、ブドウの潜在能力を最大限に引き出そうと、糖度や酸味などを足さないワイン造りに取り組む。他のワインとの差別化を図るため、ヤマソービニオンなど山ブドウの交配種やネッビオーロなど山梨では珍しいイタリア品種を主力に据える。

 この地で香り豊かな酸味が強い特徴的なワインもできている。「牧丘ではこんなワインに仕上がるんだというところを見せたい」。小さなワイナリーで意欲的な挑戦が始まっている。

 国内屈指のワイン産地、甲州市勝沼町地区でもテロワールを意識した動きが出てきた。市内のワイナリーで作る勝沼ワイン協会と地元JAが今秋導入したのは、取引時に甲州種ブドウの畑情報を記録する取り組みだ。ワイナリーは畑ごとの特徴にこだわった醸造や、細かい地域名の表示が可能になる。

 主導した同協会会長で1937年創業の老舗ワイナリー「勝沼醸造」社長、有賀雄二さん(64)は「土地の個性を反映させた、土地の見えるワインが求められていく」と、早くからテロワールの可能性に着目していた。

 2001年、御坂町(現笛吹市)の水はけが良い地区の甲州を仕込んだワインに有賀さんは衝撃を受けた。「何て香りが豊かなんだ」。数年続けて同じワインが出来上がったことで、偶然ではなくその土地のテロワールによるものと確信した。

 04年、このワインを地区名の「イセハラ」としてリリース。香りに加えて酸味と甘さのバランスが良いのが特徴だ。「各地区で同じことが起きるかもしれないと思うと、違う地区のブドウを混ぜるのが怖くなった」と語る。

 北海道や長野県など産地間競争が激しいワイン業界。国産ワインの先駆けとして勝沼が何をすべきか。「先人たちが残した日本一の産地をつなぐために、山梨ならではのワインを造る必要がある」。個性あるワイン造りにまい進する。

<テロワール>

 ワイン業界でよく使われる言葉で、土地ならではの味わいといった意味のフランス語。ブドウの育成に影響を及ぼす気候や土壌など、ワイン造りに関わる条件を総体的に表す。土地の個性がワインに表現されるとして概念的に使われることが多い。ワイン関連書籍では気候、地勢、土壌など環境要因を挙げるものが見られる。造り手や風の流れ、太陽光の当たる角度といった条件を含めることもあり、とらえ方は様々。

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862225 0 テロワールの探求~山梨ワインの今~ 2019/10/24 05:00:00 2019/10/24 05:00:00 2019/10/24 05:00:00 ブドウの状態を確かめる広瀬さん(9月24日、山梨市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191024-OYTAI50016-T.jpg?type=thumbnail

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