E257系、別れのポスター 新人駅員制作、甲府駅に 中央線特急きょう引退
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「海なし県で育って18年。沿線のみなさんには、長い間かわいがっていただき、本当にありがとうございました」。JR東日本の中央線特急「あずさ」「かいじ」で使われてきた「E257系」が、ダイヤ改正前日の15日を最後に定期運行から引退する。甲府駅のホーム待合室にはE257系への乗務を夢見ていた新人駅係員が作ったポスターが貼られ、別れを惜しんでいる。(中山潤)
ポスターはB1判。新府駅(韮崎市)付近や笹子峠などを走るE257系を撮影した四季の写真を載せている。
制作したのは、南アルプス市出身で入社1年目の甲府駅営業係、望月幹雄さん(19)。E257系は2001年に「あずさ」、02年に「かいじ」に導入された。当時開催された試乗会に親に連れられて参加し、高校時代は毎朝、最寄りの竜王駅のホームに停車する車両を眺めていた。中央線特急の車掌に憧れ、JR東の入社試験を受けに八王子へ向かう時に乗ったのもE257系だった。
念願がかない、昨年4月に入社。駅改札口に立つのが主だが、繁忙期にはホームに立ち、E257系の発着の安全確認をすることもあった。ただ、車掌になるには駅員を2年間務め、社内試験を受ける必要があり、E257系への乗務は間に合わなかった。鉄道好きの子どもたちの関心が新型車両に移っていくのも寂しく感じていた。
「何とか引退を盛り上げたい」と、趣味の鉄道写真を生かしたポスター掲示を発案し、駅長の許可を得た。撮りためた数百枚から最近撮影した4枚を厳選し、パソコンソフトで作成。県民への感謝を表現しようと、山梨の風景を盛り込み、E257系を擬人化して語らせている。
E257系の車体には、武田家の家紋「武田菱」をイメージした桃色や黄色などの鮮やかなひし形が大きく描かれている。老朽化が進み、揺れが少ない新型に快適さでは劣るようになったが、望月さんは「武田菱を取り入れた大胆なデザインは古びていない」と熱く語る。
引退後は、内外装を改修して車体デザインを変更した上で、東海道線の特急「踊り子」に転用される。望月さんは「地味な存在だったかもしれないが、多くの皆さんの記憶にとどめてもらえれば」と話している。ダイヤ改正日の16日、駅に貼られたポスターを自分で剥がすという。
ポスターの最後はこう締めくくられている。「山梨のみなさんに、富士山の向こうでお会いできる日を首を長くして待っています」