リニア建設住民不安 南ア差し止め提訴 騒音「正当な補償を」

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工事差し止めを求めて提訴した原告団(8日)
工事差し止めを求めて提訴した原告団(8日)

 JR東海が2027年に東京(品川)―名古屋間で開業を目指すリニア新幹線を巡り、南アルプス市の沿線住民ら8人がJR東海に工事差し止めや慰謝料などを求める民事訴訟を甲府地裁に起こした。リニアの建設差し止めを求める訴訟は初めて。原告側が「最後の手段」とする提訴に踏み切った背景を探った。(中山潤)

 一部の原告が暮らす南アルプス市藤田とうだは、田畑が点在するのどかな住宅地。ここを幅約22メートルの高架橋用地が横切る計画だ。未着工の対象エリアの地面に埋め込まれた黄色のピンが、予定地であることを示している。

 原告の一人、秋山美紀さん(47)宅は庭の一部が予定地となった。家の壁と予定地との距離は最短2メートル。自宅敷地の目の前に高架橋の柱が設置されるという。

 立ち退きを覚悟したが、JR東海の提案は「庭の一部を買い取りたい」という予想外のもので、自宅全体の買い取りは拒まれたという。工事中の騒音や振動については明確な答えを得られなかった。「引っ越す費用を捻出したくても、リニアが目の前を走る家は売れない。ここでどう生活すればいいのか」と話す。

 過去には新幹線が整備された後に騒音や振動を巡る訴訟があった。新幹線の公共性と沿線住民が被る不利益がてんびんにかけられた。

 東海道新幹線では開業10年後の1974年、名古屋市の沿線住民が騒音・振動の差し止め(減速)と損害賠償を求め、国鉄(当時)を提訴。1、2審ともに国鉄の加害責任を認めたものの、新幹線の公共性が高いことを理由に減速は認めなかった。最高裁で係争中の86年、国鉄が騒音対策を講じることで和解した。

 先頭車両の形状を工夫して騒音の原因になる空気抵抗を減らし、防音壁の設置やかさ上げ、レール面を滑らかにする作業を行った。環境省によると、2011年に沿線74地点で測定された騒音は、事業者側に求められる目標値(75デシベル)以下を達成しているという。

 浮上走行するリニアは同じスピードで比較すると、レールを車輪で走る従来の新幹線よりも静かで揺れも少ないという。JR東海は、16両編成のリニアが防音フードのある高架区間を時速500キロで走行した場合、車体の中心から25メートル離れた沿線の騒音は70デシベルと予測している。

 ただ、70デシベルは騒々しい街頭の音や震度2の揺れに例えられるレベルだ。原告らで作る「南アルプス市リニア対策協議会」は、騒音や振動、日照の阻害などの影響はJR東海が取得する22メートル幅にとどまらず、広範囲に及ぶと主張。昨年の民事調停では用地の端から30メートルまでの補償を求めたが、不調に終わった。

 代表の志村一郎さん(77)は「JR東海は沿線住民の身になって考え、正当な補償をしてほしい」と訴える。

 一方、JR東海の広報担当者は国の基準を参考に補償対応をしてきたとして、「訴状が届いたら内容を確認の上、裁判で当社の考えを説明したい」とコメントしている。

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589192 0 ニュース 2019/05/18 05:00:00 2019/05/18 05:00:00 2019/05/18 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190518-OYTNI50004-T.jpg?type=thumbnail

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