韮崎に落語の恩返し 春風亭弁橋さん「二ツ目」昇進

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

「富士川町落語まつり」で口演する春風亭弁橋さん(6月29日、富士川町で)
「富士川町落語まつり」で口演する春風亭弁橋さん(6月29日、富士川町で)

県出身40年ぶり 10月、市内で記念会

 韮崎市出身の落語家、春風亭弁橋べんきょう(本名・石坪卓巳)さん(23)が今月、二ツ目に昇進した。関係者によると、県出身の落語家としては約40年ぶりの昇進という。韮崎で落語家の夢を育んだ弁橋さんは「落語で古里に恩返しをしたい」と話す。(鈴木経史)

 「何を隠そうこのわたくし、韮崎市出身でございます」。まだ前座だった6月下旬、富士川町で行われた「富士川町落語まつり」に出演した弁橋さんが語ると、会場は拍手に包まれた。

 勤めた演目「牛ほめ」は、伯父の新築祝いに訪れた与太郎が間違いだらけの言葉で新居を褒める滑稽ばなしの定番だ。底抜けに明るい与太郎と、あきれる伯父のやりとりをのびのびと演じた。

 「俺、落語家になるよ」。県立韮崎高3年の3月に切り出した言葉に、父母は絶句した。その数日前、広島の大学への合格が決まった翌日に東京へ行き、春風亭柳橋りゅうきょうさん(63)に入門を直訴。「(弟子として)とるよ」と返事をもらった。大学受験したのは「勉強から逃げて落語を選んだと思われたくなかったから」。それから1週間、父は口を聞いてくれなかった。

 反対を振り切って卒業間もない2015年4月、柳橋さんの家に住み込みを始め、「春風亭べん橋」の名前をもらった。お茶くみや太鼓、着物のたたみ方など、初めての体験ばかりで、師匠から「気遣いが出来ない」と何度も叱られた。それでも憧れの落語家としての生活は「全て自分の芸に返ってくると思った」。それから4年余り。二ツ目に昇進して「弁橋」と改めた。

 小学生の頃。午後8時以降、テレビを見ないのが家のルールだった。仕方なくつけたラジオから立川談志さんの落語が流れ、「何だ、これ」と興味がわいた。落語の絵本やCDをせがむ息子を母は「変わった子ね」と不思議がった。

 小4の時、甲府で行われた落語会へ連れて行ってもらい、生の落語に触れた。林家正蔵さんが一人、舞台上に座り、会場いっぱいの客を笑わせる姿に憧れた。

 韮崎にはプロ落語家が指導する講座があり、プロを招いた「にらさき落語会」も毎年開かれていた。中1~高2の5年間、講座に月1回通い、子ども落語家として公民館や敬老会で口演するうち、人を笑わせる喜びに目覚めた。落語会には欠かさず足を運んだ。高校の部活で柔道に励み、進学クラスの授業を受けながら、落語の研究を続けた。

 にらさき落語会に毎年のように出演していたのが柳橋さんだった。現在は落語芸術協会の副会長を務める大ベテランだ。弁橋さんは「師匠の柔和な雰囲気と登場人物の愛らしさにひかれた」と語る。

 落語会の事務局長で落語講座も主宰する小沢愛一郎さん(68)は、「韮崎で落語文化を広げようと20年以上続けてきた。幼い頃から知っている弁橋さんがひとり立ちしたことは感慨深い」と話す。

 披露目の手ぬぐいに付けるのし紙の表書きは、韮崎高の柔道部顧問だった矢崎克洋さん(54)に依頼した。矢崎さんは「厳しい修業に耐え、よくここまで続いた」と喜ぶ。

 東京の池袋演芸場で今月11日に行われた二ツ目昇進初日の高座には、父母や親戚、友人が駆けつけた。弁橋さんは、客席で涙ぐむ父の姿を見逃さなかった。寄席の後、父は「やっと聞けるようになってきたな」と声をかけてくれた。

 古里への感謝を込め、「山梨の宣伝マンになって、落語を通じて全国に魅力を伝えていきたい」と力を込める。目指すのは一流の真打ちだ。「うまいだけじゃなく、お客さんを楽しませる落語家になりたい」

 9月上旬まで都内の寄席で二ツ目昇進のお披露目が行われている。10月26日には韮崎市民交流センター「ニコリ」で師匠の柳橋さんも出演する記念落語会が開かれる。前売り券1500円で9月1日から販売。問い合わせは市立大村記念図書館(0551・22・4946)へ。

二ツ目

 江戸落語家の階級の一つ。入門して「前座」として数年間の修業を終え、裏方の仕事から外れ、ひとり立ちする。高座で羽織やはかまを身に着けることが許され、自身の落語会を開催し、手ぬぐいを作ることができる。一般に二ツ目として10~15年の経験を積んで技量が認められると「真打ち」に昇進する。県出身の落語家には三遊亭小遊三さん(大月市)、古今亭寿輔さん(甲府市)、林家正雀さん(大月市)らがいる。弁橋さんは正雀さん以来の二ツ目昇進。

無断転載禁止
753018 0 ニュース 2019/08/21 05:00:00 2019/08/21 05:00:00 2019/08/21 05:00:00 「富士川町落語まつり」で口演する春風亭弁橋さん(6月29日、富士川町ますほ文化ホールで) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/08/20190820-OYTNI50054-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ