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    計1万8000人を超す死者・行方不明者を出した東日本大震災。発生から5年を迎える被災地で復興に情熱を傾ける人々の姿、再生に向けた足取り、災害の教訓を生かす取り組みをお伝えします。
    震災7年

    防災力をアップデート(上) 電気自動車を非常電源に

    • 屋内にある駐車スペースから走り出す初代日産リーフと木造2階建ての「木の家」
      屋内にある駐車スペースから走り出す初代日産リーフと木造2階建ての「木の家」
    • 電力会社からの電気が止まっても、太陽光発電やガスによる家庭用燃料電池、蓄電池など多様な電源が使える住宅の仕組み。電気自動車も一翼を担う
      電力会社からの電気が止まっても、太陽光発電やガスによる家庭用燃料電池、蓄電池など多様な電源が使える住宅の仕組み。電気自動車も一翼を担う
    • リーフの累計販売台数は2017年末現在、電気自動車として世界最多の約30万台。国内では9万台に迫る
      リーフの累計販売台数は2017年末現在、電気自動車として世界最多の約30万台。国内では9万台に迫る

     東日本大震災から7年。巨大地震のリスクが叫ばれながら、首都圏に住む私たちの備えはさびついていないだろうか。近年、東京都は日々の暮らしの中で少し多めの物資を用意する「日常備蓄」を呼びかけるなど、生活に溶け込んだ災害への備えが主流になってきた。そこで家庭の防災力を「最新化」するアイデアを3回に分けて紹介する。初回は、次第に普及してきた電気自動車。車として使うだけでなく、一部の車種は住宅の非常電源にできる。(地方部・江藤 一)


    ■停電でもボタン押すだけで復旧


     暗闇となってから約1分、「これが大地震だったら何日も続くのか。不安だろうな」と思い始めた頃、家中の明かりがパッとついた。日産の電気自動車「リーフ」から住宅へ電気が流れ始めたのだ。実験とはいえ、まばゆい光にホッとする。エアコンから温風が吹き出し、IHクッキングヒーターなど調理器具も使える。日常が戻った。

     ここは、積水ハウス関東工場(茨城県古河市)内の実証実験住宅「木の家」。充電のため普段から車を電力制御装置に接続している想定なので、装置のタッチパネルを操作して待つだけだ。

     排ガスが出ない特性を生かし車庫と居住スペースが一体になった家のため、外に行く必要すらない。これなら、夜でも家具倒壊による救助などがスムーズにできると納得した。

    ■新型車だと3日超の電力に

     日産自動車が、スマートフォンなどにも使われるリチウムイオン電池を装備した電気自動車・初代リーフを日米で発売したのは2010年12月。12年6月からはリーフに蓄えた電力(容量24キロ・ワット時)を一般住宅へ供給する電力制御装置の販売も始まった。安い深夜電力を車に蓄え、昼に家で使う目的だったが、大震災による電力不足を受け、非常電源としても注目されている。

     17年10月には2代目リーフの国内販売がスタート。電池容量は40キロ・ワット時に強化された。一般的な住宅の電力使用量(1日約12キロ・ワット時)なら、フル充電で初代リーフは2日間、新型なら3日あまりの電力をまかなえる。

     同年末までに累計約9万台のリーフが国内で販売され、同年11月末までに電力制御装置は約3900台設置されている。

    ■他の電源も組み合わせて

    • 撮影に使用した初代日産リーフ
      撮影に使用した初代日産リーフ

     積水ハウスは、電気自動車から電力を取り込める環境配慮型住宅を12年から販売している。

     太陽光発電を標準装備し、普段は電気自動車に充電が可能。停電時には車の蓄電池を非常電源に活用できる。

     ただし、電気自動車はいつもフル充電されているとは限らない。住宅には別の蓄電池、ガスを使って発電する燃料電池も用意されている。

     なお、別会社の積水化学工業は、日産リーフだけでなく、三菱自動車のプラグイン・ハイブリッド車「アウトランダーPHEV」(容量12キロ・ワット時)に対応した住宅も発売している。こちらは車の蓄電池で約1日間、さらにガソリン発電でも住宅の電力をまかなえる。

    ■「エネルギー自足」なら避難いらず

    • 実証実験棟が並ぶ積水ハウス関東工場内の「エコファーストパーク」。画面奥が「木の家」
      実証実験棟が並ぶ積水ハウス関東工場内の「エコファーストパーク」。画面奥が「木の家」

     新築住宅は震度7クラスの大地震でも倒壊しないことが前提となった。電気自動車の普及も急速に進む可能性がある。

     「自宅が地震に耐え、水や食料が確保出来ていれば、最後に問題になるのはエネルギーの供給」と積水ハウス広報部の元榮先人(もとえ・さきと)さんは話す。

     「私たちの環境配慮型住宅では環境に良いだけでなく、防災面でも避難所に移動することなく自宅で普段の暮らしを続けられます」と強調し、「電気自動車もその重要な支えとなりえます」と話している。

    こんなグッズも


    ■備蓄しやすい「マグネシウム空気電池」

    • 非常用マグネシウム空気電池「マグボックス」(左)と「マグボックススリム」(古河電池提供)
      非常用マグネシウム空気電池「マグボックス」(左)と「マグボックススリム」(古河電池提供)

     電気自動車から個人宅への送電は、現在は戸建て住宅に限られる。アパート・マンションに住む家庭の非常電源として、乾電池は相変わらず大切。携帯電話より電力を使うスマートフォンの普及で充電の重要性も増しているが、一般の乾電池は時間がたつと自然に放電して減っていくのが弱点だ。

     それを克服したのが、水を注ぐと化学反応が起きて発電する「マグネシウム空気電池」。自然放電しないので、いざという時の信頼性が高く、長期備蓄できる。

     「水電池」等の名称で、複数のメーカーが参入し、懐中電灯やラジオに組み込んだものや単3乾電池タイプのものなど多様化している。

     ゴミの分別処理に苦労する避難所で使用済み容器が捨てやすいよう工夫を凝らしたのが、古河電池(横浜市)と凸版印刷(東京都)が2014年に共同開発した「マグボックス」。水2リットルを入れると最大5日間発電する。発電量はアルカリ乾電池約240本分と大きく、スマホを最大30回充電できる。

     東日本大震災の教訓を基に設計され、海水や汚れた水でも使える。メーカー保証は5年間だが10年は持つという。使用後は可燃ゴミとして捨てられるので、家庭での備蓄にも便利。開発した古河電池の技術陣は「ものづくり日本大賞」の経済産業大臣賞を受賞した。

     1辺約23センチの立方体で、水を入れる前の重さは約1.6キロ。奥行きを約半分にするなど小型化し、スマホを最大20台充電できる「マグボックススリム」(重さ約1キロ)も16年2月に発売した。いずれもオープン価格。(地方部・久保哲也)


    (リンク先)

    リーフのWebカタログ(日産自動車のホームページ)

    https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/leaf.html

    積水ハウスのホームページ

    http://www.sekisuihouse.co.jp/

    古河電池「マグボックス」

    http://www.furukawadenchi.co.jp/mgbox/index.htm

    ■電気自動車で家の明かりをつけてみた(動画)

    2018年04月16日 17時27分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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