図書館の力<2>がん情報の小冊子贈る

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八巻さん(中央)から、ギフトの現状を聞く岡田さん(左)(東京都中央区の国立がん研究センターで)
八巻さん(中央)から、ギフトの現状を聞く岡田さん(左)(東京都中央区の国立がん研究センターで)

 「情報は力なり、です。だから病院よりぐっと身近な図書館にこそ最新の確かな情報をそろえてほしい」

 そんな思いから、愛知県豊田市の岡田隆さん(61)は、国立がん研究センターの「がん情報ギフトプロジェクト」に寄付をした。

 この事業は2017年に始まった。一般の寄付を元手に、治療情報をまとめた「がんの冊子」やチラシを公共図書館に贈る。寄付は1000円から受け付け、寄贈先の都道府県を指定できる。3万円集まるごとに、対象地域の1館に1セット(小冊子400部とチラシ500部)が届く。

 岡田さんは、がん情報を求めて渡米した経験がある。02年2月、大腸がんが肺に転移し、治療している合間のこと。闘病中に英語の勉強を始め、米国の医療事情がテーマの教材に出会い、腫瘍内科やターミナルケアなど耳慣れない言葉に触れたのがきっかけになった。

 「米国には何か希望があるのではないか」

 アポなしでボストンやニューヨークのがん専門病院を訪ねると、相談窓口のスタッフが歓迎してくれた。そこで手に入れたのが患者向けの小冊子。スーツケースに詰め込んだ。

 目を通すと生きる力がわいてきた。中でも標準的な診断や治療をまとめた小冊子が役立った。「受けてきた治療の正しさを知って安心した」。一時は死も覚悟したが、その後は新たな転移もなく07年でがん治療を終えた。

 同センターが「がんの冊子」を発刊するようになったのは、その年から。岡田さんは「アメリカで受けた優しさへの恩返しとして、ほかの人の役に立ちたい」と思い立ち、11年度から2年間、作成に参加した。

 冊子はウェブサイトで公開され、全国のがん診療連携拠点病院の相談窓口にも置かれてきた。ただ、訪れる人は少なく、認知度の低さが悩みの種だった。

 「どうしたらもっと見てもらえるだろう?」。同センターが、岡田さんら患者・家族に知恵を借りたところ、アイデアが飛び出した。スーパーに置いてもらったらどう? コンビニのレシートに広告を出しては?

 検討の末、図書館に白羽の矢が立った。どこの地域にもあり、誰でも自由に無料で利用できる施設。普及を目指すなら打って付けだ。プロジェクトが動き始めた。「通い慣れた図書館なら目に触れやすい」。同センターがん情報提供部の八巻知香子さんは、その効果に期待をかける。

 これまで40都道府県123館に贈られたギフト。昨年、がん拠点病院のない関東のある町にも届いた。心待ちにしていた卵巣がんの女性(43)はつぶやいた。

 「せめて命をつなぐ情報は平等であってほしい」

438581 1 医療ルネサンス 2019/02/11 05:00:00 2019/03/13 09:57:26 八巻さん(中央)から、がんギフトの現状を聞く岡田さん(左)(東京都中央区の国立がん研究センターで) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190210-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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