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[スキャナー]新型コロナ、「指定感染症」負担に…厳格措置の見直し議論へ

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軽症者も入院 医療圧迫

 厚生労働省の助言機関は、新型コロナウイルスを感染症法上の暫定的な「指定感染症」に位置付けていることについて、見直しの議論を始める。この位置付けは、感染者への入院勧告や就業制限などの根拠となっている。夏に入り、無症状や軽症の感染者が多く報告され、医療機関や保健所などの機能を圧迫しているとして、見直しを求める声が上がっている。(科学部 中居広起、政治部 山崎崇史)

 ■拡大防止策

 「医療機関や保健所の負担につながっているとの指摘がある。何が課題かも含め、議論してもらう」。加藤厚労相は25日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いについて、助言機関が検討を始めることを明らかにした。入院させる対象者が多くなっており、保健所もその振り分け業務に追われているとの指摘がある。助言機関は、規制の必要性と課題を整理し、政府の感染症対策分科会に報告する。

 中国・武漢市で最初に流行した新型コロナは、1月中旬に日本で初めて感染者が確認された。中国で多くの死者や重症者が出ていたため、政府は、指定感染症に位置付け、かかった場合の危険度が高い順に5段階に分けた、上から2番目の「2類相当」とした。入院勧告や就業制限を行えるようになり、政府や自治体は、感染拡大防止策をスムーズに進められるようになった。

 これまでに指定感染症となった、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、鳥インフルエンザのH5N1、H7N9は現在、いずれも2類となっている。

 夏に入り、5月までの第1波に比べ、無症状や軽症の感染者が目立つようになった。規定上は全例に入院の義務はないが、「軽症者も入院し、医療機関の病床を圧迫している」などとの指摘が医療関係者からも上がり始めた。

 2009年に流行した新型インフルエンザ(H1N1)は、10年8月、世界保健機関(WHO)が大流行の終結宣言を出したことなどを受け、位置付けを変えた。当初、指定感染症ではないものの、1類相当の厳しい措置を取る対象だったが、11年4月には従来の季節性インフルエンザと同様に5類とした。

 ■経済の足かせ

 議論の開始に、政府内には歓迎ムードが広がっている。規制が強い今の位置付けが、経済再建の心理的足かせになっていると考えているためだ。今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が戦後最大の下落幅であることも踏まえ、西村経済再生相は25日、「重症者や死者を増やさず、経済活動との両立を図らなければならない局面にいる」との認識を示した。

 新型コロナの区分見直しが経済活性化につながるかは未知数だ。それでも、「新型コロナに対する国民のイメージを変え、消費拡大につながる可能性がある」(内閣官房幹部)と期待する声が上がる。区分見直しには法改正の必要がなく、迅速に対応できることも一因とみられる。

 ■慎重意見

 一方、感染症法を所管する厚労省の中には、区分見直しに慎重な意見も根強い。厚労省幹部は「感染者の入院措置がなくなれば、必要なのに入院しない感染者が出てくる可能性がある」と懸念する。指定感染症から外せば、現在は全額公費で賄われる入院費用に感染者の自己負担が生じる可能性もある。

 和田耕治・国際医療福祉大教授は「収束まで時間がかかり、限られた医療資源を考えると、厳格な対応は長続きしない可能性がある。将来的に重症化予防がもう少しできるようになれば、様々な措置を緩めることも考えていく必要がある」と話す。

感染症 危険度5段階…コロナ「2類相当」

助言機関であいさつする加藤厚生労働相(中央)(24日、厚労省で)
助言機関であいさつする加藤厚生労働相(中央)(24日、厚労省で)

 感染症法は、ウイルスや細菌による感染症を、症状の重さや感染力に応じ、基本的に1~5類の5段階に区分している。

 1類には、エボラ出血熱やペストなど、感染者の死亡率が高い感染症が並ぶ。これに次ぐ2類は、結核やSARS、MERSなどだ。毎年冬に流行する季節性インフルエンザや、麻疹(はしか)は、危険度が最も低い5類に位置付けている。

 分類に応じて感染者への措置などが異なる。1、2類では、必要であれば感染者に入院を勧告でき、従わない場合は強制入院させることができる。1類だけは、病原体に汚染された建物の立ち入り制限も可能だ。また、1~4類は、全ての感染者の情報について、医師は直ちに保健所に届け出る必要がある。5類は、原則7日以内に届け出る。

 新型コロナウイルスが指定を受けている「指定感染症」は、国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある感染症が対象となる。緊急時に柔軟に対応するため、1~3類に準じた取り扱いができるのが特徴だ。当初は2類相当だったが、無症状者の入院措置など、1類相当の規制も行えるようにしてきた。政令で指定し、1年で失効するが、1年に限って延長できる。新型コロナは、来年1月末が当面の期限となっている。(医療部 辻田秀樹)

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1433444 1 医療・健康 2020/08/26 05:00:00 2020/08/26 07:27:04 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200825-OYT1I50099-T.jpg?type=thumbnail

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